【神戸レインボーハウス】株式会社フェリシモ新入社員に、子どものグリーフサポートについて研修を実施
阪神・淡路大震災をきっかけに始まったつながり
6月15日(木)、株式会社フェリシモの新入社員11名が、新人研修の一環で、あしなが育英会の心のケア拠点の一つ「神戸レインボーハウス」に来館しました。
株式会社フェリシモは、阪神・淡路大震災をきっかけに1997年から「経験と言葉の贈り物」をテーマとした「神戸学校」という活動を開始され、毎月1回、各界で活躍されているゲストを招待して講演会を開催しています。今日までの26年間、その収益金をあしなが育英会に寄付してくださり、震災で親を亡くした子どもたち(※1)の心のケア活動を支えていただきました。
当日は新入社員11名が来館し、神戸レインボーハウスの歴史や活動、親を亡くした子どもたちのグリーフについて学びました。
(※1)阪神淡路大震災で親を亡くした子どもたちの支援から始まり、現在は主に東日本大震災で親をなくした子どもたちを支援している
遺児の対談を通して知る、子どもたちの“グリーフ”
前半は、神戸レインボーハウス職員による活動紹介とグリーフサポ―トに関するレクチャーを実施。
レクチャーのなかでは、東日本大震災で父を亡くした津波遺児と、小学生の頃から神戸レインボーハウスに来ていた自死遺児の出会いと交流を取り上げた記事(※2)を紹介しました。
ふたりが出会ったのは東日本大震災の3年後。当時、自死遺児のミナミさんはファシリテーターとして、東京のあしながレインボーハウスでボランティアをしていました。
一方、津波遺児のサワハさんは小学5年生。父を亡くした悲しみを押し隠し、家でも学校でも涙を見せることがなかった彼女が、初めてつらい気持ちを話せた相手がミナミさんでした。
死にたいとすら考えていたサワハさんの生き方は、ミナミさんとの出会いで大きく変わりました。
「死別ってつらいことかもしれへんけど、それがすべてじゃないと思うし、そこから出てくる縁もあるから、それに気づけて良かった。気づけるのが大事やと思う」(ミナミさん)
「もっと知ってほしいよね。親を亡くしても、苦しみや悲しみだけがずっと一生残るわけではないっていうのを。」(サワハさん)
サワハさんが19歳の時に行われた対談でのふたりのやりとりも紹介し、親を亡くした子どもたちのありのままの気持ちやグリーフケアについて、理解を深めていただきました。
レクチャーを受け、本会機関紙を読んでいる様子
レクチャー後の質問タイムには参加者から、「自分の友だちが『親はいないんだ』と話してくれたとき、どうしたらよいのでしょうか」という具体的な質問もありました。
職員からは、「話してくれた方を思うからこそ何か言わなければと思ってしまいますが、ただ話を聴き側にいることだけで、お気持ちは伝わると思います」とお伝えし、質問者の方は深くうなずいていました。
(※2)機関紙『Newあしながファミリー』175号16・17面
子どもたちの“グリーフ”に触れる体験
後半は、普段子どもたちが遊んだり話したりして過ごしているレインボーハウスの部屋を実際に見て体験していただきました。
レインボーハウスには、子どもたちが抱いているさまざまな気持ちやエネルギー、グリーフ(grief:喪失に伴う様々な反応)を多様な方法で表現できるよう、いくつかの特別な部屋があります。参加者の方々にも「音楽の部屋」で楽器を楽しんだり、壁が真っ赤なクッションで覆われサンドバッグがつるされた「火山の部屋」では子どもたちのようにパンチングをしてみたり、自由に過ごしていただきました。
また館内に掲示してある子どもたちが作った作品から、そこに表現された一人ひとりのグリーフを感じていただきました。
子どもたちの作った作品を見学
参加者の感想
神戸レインボーハウスでの研修に参加されたフェリシモ社員のみなさまの感想を数点ご紹介します。
- 今後神⼾学校を運営していくにあたって、この活動の先に誰かの救いや居場所になれる未来があると思うと、1回1回の講演を開催する重みを感じていけると思いました。
- ファシリテーターさんたちのお話を伺い、気持ちを無理に開⽰させようとしない姿勢に感銘をうけました。何かのせいにしたいけど⾃分も責める想いや、伝えたいけど相反する感情が混ざってしまう感情の寄り添い⽅は、⼀辺倒にはいかないことと思います。とても繊細な感情だけど、それを理解してくださってる場所があること・⽅たちがいることを知れて、安⼼いたしました。
- 震災や病気、⾃死など親を失くした境遇はそれぞれ違えども、悲しく⾟い気持ちや時には愛しさも共有できる場所に強く⼼を打たれました。
レインボーハウスでの出会いと繋がり
株式会社フェリシモのみなさまをはじめ、「神戸学校」に参加された多くの方々の温かいご支援のおかげで、研修で紹介したミナミさんとサワハさんは出会うことができました。
彼女たちを含むたくさんの遺児とご家族が、レインボーハウスで、同じ経験をした子どもたちやご家族、ファシリテーターなど様々な人たちと出会い、繋がりを持ちます。その繋がりのなかで、一人ひとり、自分のペースでグリーフに触れながら、人生を歩んでいます。
今後も、子どもたちの声やレインボーハウスにて開催しているグリーフサポートプログラムについて、社会に発信していきたいと思います。
レインボーハウス(神戸・東京・仙台)では、施設見学、講演、研修のご提供などのご相談を随時受け付けております。ご希望の方は以下のフォームよりお問い合わせください。