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「貧困なんかに負けないゾ!家計のため夜間大学進学」高校生・角田正仁さん(18)=仮名=

2010年02月10日 [ひと]

―機関紙「NEWあしながファミリー」111号10年02月01日『なかま』から―


「本当に大学に進学できるか、不安だった。家族で話したときには激しい言い争いでした」と振り返る。
母親の愛子さん(45)は現在失業中で、遺族年金のみで家族を養っている。とても大学の費用まではまかなえない。そのため、正仁さんを厳しく問い詰めた。なぜ大学に行きたいの、なぜ働かないの? ただ目的もなく大学に行くのなら働いてほしい、とまで言った。

「僕は3人きょうだいの末っ子。姉2人も大学に進学したから、どんなに厳しいことを言われても、自分も行けるものだと信じ込んでいました。だけど受験料や入学金、授業料などを調べると、想像以上にお金がかかるとわかった。今まで家計のことを真剣に考えなかった自分は甘かった…」
正仁さんは09年11月、東京理科大学工学部第二部経営工学科のみ受験し合格した。他大学は受けていない。受験料は3万5千円と高く、1校に絞ってできるだけ費用をかけず入学費等にあてたかった。
しかし、それでもまだ足りない。高校生活の中で短期のアルバイトをして貯金してきたが、受験料や入学前にある課題の教材費などに消えてしまった。働きながら学ばざるを得ない。

父親の和男さんは正仁さんが生まれたのを機に、子育てのために職場を替えて忙しくなった。だが、正仁さんが4歳の時に闘病生活に入り、わずか1年後に脳腫瘍で亡くなる。一緒にいた記憶はほとんどない。
父親が亡くなって間もなく小学校へ入学したが、高校へ入学するまでひとり親家庭の人と出会うことはなかった。
「父親がいないことを普段は意識していなかったけど、厳しい母が時々みせるつらそうな姿を見ると『お父さんがいたら支えてくれるのに』と、父のいない寂しさがこみ上げてきました。そんな思いを話せる人は誰もいなかった」

高校へ入学し「つどい」に初めて参加した時に、自分が変わったと感じた。初めて「親を亡くした」同じ経験をしている仲間と出会い、「つらい思いをしてきたのは自分だけではない」と思った。そこにいた仲間から、お互いに支え合う意識を感じて、抱いていた孤独感は消え去った。「今ではあしながの友だちが一番の親友です」。

「なんで真っ先に学費のことを考えなきゃいけないんだろう」
09年12月に開催された「第21回遺児と母親の全国大会」での高校生座談会。遺児高校生を代表して、2年連続で参加した正仁さんは、座談会で話した。
「うちにはお金がないからと、すでにあきらめている遺児に選択の自由はない。やはり一般世帯と遺児家庭との間には格差がある。ぜいたくを望んでいるのではなく、せめてチャンスだけでも平等にほしい」
現状をみんなで話し合ったが、「余分な授業料は取らないで」「入学後の学費が足りない」など、共通した問題はやはり教育費だ。高校授業料無償化でも、大学進学を考えると、とても払えそうにない。

こんな状況だからこそ将来にも不安がつのる。「今も就職難が気がかりだけど、景気がよくなっても、それまで就職できなかった多くの先輩たちと競争しなければならない。それが怖いですね。人生経験が豊富な人もいるでしょうから」。

悩み抜いた大学受験をきっかけに、人生をどう生きるか真剣に考え始めた正仁さん。そんな時だからこそ、子どものために一生懸命働いていた父の姿と母の苦労を思う。
「絶対仕事を得て、貧しさを跳ね返す」ために、まずは、大学進学というチャンスをつかんだ。人生はこれからが勝負だ。貧困なんかに負けるもんか!

(富樫康生記者)


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