開始から5年目を迎えて【後編】|画面越しの子どもたちが、私の原動力
あしなが育英会が2020年に開始した、遺児小中学生(※)学習支援プログラム「ラーニングサポートプログラム」(以下、LSP)。学習者である子どもたちからも、彼らをサポートする大学生たちからも高い満足度を得ている、教育支援事業のひとつです。
本記事では、LSP開始当初から子どもたちの学習をサポートしてくれているラーニングサポーター、齋藤さんのインタビューをご紹介します。
※遺児小中学生:LSPは、親を亡くした子どもたち、または、親が障がいで働けない家庭の子どもたちを対象としています。2022年からは、中学生から継続して参加している高校生も対象になりました。
■LSPの活動内容紹介と、子どもたちや保護者の声は前編でご紹介しています。こちらもぜひご覧ください。
>>>開始から5年目を迎えて【前編】|子どもと大学生が一緒に成長するLSP
齋藤さん(取材当時 大学4年生)
中学2年生のとき、父親を病気で亡くし、大学進学時にあしなが奨学生となった。大学では環境問題について勉強しており、2年生のときからラーニングサポーターとしてLSPに参加している。2024年春からは産業廃棄物を取り扱う会社に就職し、現在、社会人1年目。仕事の傍ら、週1回のサポーター活動を継続している。
自分の体験を活かせることに挑戦したい
齊藤さんは、父を亡くしてから周りの目が気になりだし、ふさぎ込む日々を送っていた。そこで、「高校では、自分のことも父親のことも、誰も知らない環境で勉強したい」と考え、実家から遠いところに進学。のびのびと学校生活を送ることができた。
「あしなが育英会のことは高校の先生に教えられて知りました。先生は私の家庭事情を知って、ずっと見守ってくださっていて、勉強だけではなく、奨学金や学費の免除制度など、たくさん調べて教えてくださいました。大学入学後からあしなが奨学金を利用しましたが、ただ奨学金をもらうだけでなく、あしなが育英会の色々な活動にも参加しようと思っていました」
めでたく大学に進学した齊藤さんは、色々なことに挑戦したいと意気込んでいた。しかし、2年生への進級を控えた2020年の冬、新型コロナウィルスの流行が始まり、生活は一変した。
「大学にも通学できなくなり、あしながのつどいや募金活動も中止になりました。そんななかで何に挑戦できるだろうと考えていたところ、オンラインでできるLSPのラーニングサポーター募集の案内をもらい、すぐに応募しました。LSPは私にとって、大学時代、特に力を入れた活動の一つになりました」
継続的なかかわりで、子どもの成長を支える
プログラムの核となるのは、毎週1回、1時間、ビデオ通話ツールの「Zoom」を使って行われる個別学習セッションだ。小中学生の子どもと、大学生を中心としたボランティアでペアをつくり、子どもの学習目標に沿って、1年間継続的に学習する。小中学生には本会が無償でタブレットを貸与し、子どもたちが学習に集中できるよう環境を整えている。
「オンラインでのコミュニケーションなので、何よりもオーバーリアクションを心がけています。画面越しだとどうしても伝わりにくいことがあるので、『すごいね』、『出来たね』といったことを、声かけはもちろん、表情も豊かに伝わるように工夫しています」
継続的にかかわることで子どもたちの成長を直に感じられるのが、ラーニングサポーターとしての魅力だという。
「テストや成績があがるのはもちろん嬉しいことですが、それよりも、コミュニケーション能力や学習への姿勢が、最初と最後でとてつもなく変化したのが印象的でした。毎回、セッションの終わりに感想を聞くのですが、回を重ねるごとに具体的になり、弱点を自分で認識して改善策を言ってくれるようになっていきます。学習姿勢も、最初は受動的に学習していても、年度末になると能動的な姿勢へと変化していきます。『やらなきゃいけない』が、『やりたい』にまで大きく変わる子もいて、サポーター活動にはとてもやりがいを感じていました」
(左)年度末のラーニングサポーター報告会で、他のサポーターたちと1年をふりかえって意見交換をしている齋藤さん(画像左端)
(右)セッションで子どもが話してくれたことをノートに書き留めている
子どもたちとのかかわりが自分の原動力に
コロナ禍で様々な制限がある中でも、「あしなが学生募金」や「奨学生のつどい」が行われ、齊藤さんは、LSPのみならず、それらの活動にも精力的に取り組んだ。大学では、専門分野である環境問題に加えて、大好きな数学についてもとことん勉強し、とても充実した日々を送った。活発な大学生活を送った齊藤さんだが、なかでもLSPの活動は、特別な体験だったという。
「LSPの活動が、私自身の原動力になっています。勉強を教える側ではありますが、日々、子どもたちに力をもらっています。この活動があったから、大学の勉強はもちろん、就職活動も頑張ることができました」
2024年3月に大学を卒業した齋藤さんは、産業廃棄物を取り扱う会社に就職した。
「今は、好きなことを仕事に出来る喜びでいっぱいです。就職してからも、主に高校生たちを対象にLSPにかかわっています」
子どもにとって、気軽に話せる存在でありたい
ラーニングサポーターは「先生」ではない、と思っている。
「勉強を教えることももちろん大事なんですけど、それよりも、その子にとって、何でも相談できるお兄さん、お姉さん的な存在になることが大切なのかなと思います。勉強は、わからなければ、無理して知ったかぶりなどせずに『一緒に調べようか』と言えばよいのだと思います。私もそうしています」
親でも、年上の兄姉でもない「サポーター」だからこそ、“家族にも話しづらいことを話せる人”になれる。齊藤さんは、そんな距離感を大切にしてきた。
「私自身も、子どもたちにとって、“話を聞いてくれるお姉さん”になれるよう、日々精進している最中です。1週間に1時間会うだけでも、子どもたちはとても嬉しそうにしてくれるんです。LSPに興味を持っている方がいたら、ぜひ応募して、子どもたちの力になってくれるサポーターとして継続的に参加してもらえたらうれしいです」
(聴き手:リーダー育成課職員)
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