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園児19名が大根そだて 東日本遺児支援|ちいさなあしながさん

 2月某日、あしなが育英会寄付課に一通のメールが届きました。

 

 「私たちは宮崎県の保育園です。畑で大根がたくさん採れたので、6歳の卒園児19名が大根屋さんを開いて保護者の方々に買ってもらい、売上を災害で親を亡くしたり家を失った方を助けるために役立てたいというので、子どもたちの思いのこもったお金をほんの少しですが送ります。お役立てていただけると嬉しいです」

 

 保育園児からのご寄付に職員はびっくり。詳しい話を教えていただこうと宮崎県にある「石井記念やまばと保育園」に連絡し、お話を聞かせていただきました。

「おでんがたべた~い」から始まった大根畑

 一年をとおして温暖で日照時間が全国3位の宮崎県。宮崎市の北に位置するやまばと保育園の園庭では食育の一環として春夏秋冬さまざまな野菜を育てています。昨年10月下旬、園児たちの「おでんがたべた~い」の一声で、秋冬の畑では大根を育てることになりました。

 

 

大根の種をひとつずつ植えます

 

 子どもたちは小さな種を一つ一つ、畑に撒いていきます。11月中旬にはすでに小さな大根ができましたが「大きな大根を育てよう!」とせっせと間引き。手厚くお世話された大根は冬の間、宮崎の太陽と肥沃な土のおかげですくすくと育ち、収穫の時期を迎えました。

 

 

畑は大きく育った大根の葉っぱで覆いつくされています

 

 2月2日、19人の園児たちは真っ赤な帽子をかぶって大根畑に並んでいました。「ひなたの大根はでっかいのに、ひかげの大根はちっちゃいぞ!」「たいようってだいじなんだね」。そんなことを言いながら収穫を始めます。子どもたちが畑にしゃがむと全身が隠れてしまう丈まで育った葉っぱを掴んで、お友達と一緒に力を合わせて「よいしょ!」。大きな大根を引き抜くのは身体の小さな子どもたちにとっては大変な作業だったようです。

 

 

「みてみて、いっしょにほったよ!」

 

 

「みんなでいっしょにひっぱれーー!」「よいしょ!よいしょ!」

 

 

 そして、全部収穫できた頃には畑に大根の山ができていました。 

 

 「このたくさんの大根どうする・・・?」と聞く先生に、「サラダにして食べる」「みんなでおでんパーティーする」「持って帰る」と答える子どもたち。「それでも食べきれないよね」と言うと、「じゃあ、大根屋さんをしよう」との声が。「誰に買ってもらうの?」「ママに買ってもらう」「大根を買ってもらったお金はどうするの?」と聞くと「みんなでお菓子パーティーだ~!」と大興奮。そんな中、「そのお金で困っている人を助けたらいいよ」と言い出した子どもたちがいました。

 それを聞いた先生が「困っている人って、どんな人?」と尋ねると、「お家がない人たち」「台風で流されたんだよ」「津波かもよ」と口々に言い始め、「だいこんやさんをして困っている人たちを助けてあげよう!」と子どもたちは一致団結。

「すごく素敵な事だね。じゅあ、みんなでお店屋さん頑張ろう!明日は遊ぶ時間無くなるけど大丈夫?」「大丈夫!頑張る!」 

 はりきる子どもたちの表情はキラキラしていました。

みんなで手作り だいこんやさんは大繁盛!

 だいこんやさんもすべて子どもたちの手作り。まずはたくさん売れるように泥だらけの大根を洗うことにしました。大きな桶に水を張り、顔より大きな大根を両手でしっかり持って、一つ一つ手洗いできれいに土を落としていきます。「あー、忙しい忙しい」。洗ったあとはベンチの上に大根を整列させていきます。その量、なんとベンチ6台分!

 

 

掘りたての泥付き大根を綺麗に洗います。「水がつめたーい!」

 

 続いてお店屋さんの準備では、大きな紙を使って看板作り。お店が横に長いので看板を4つ作ることになりました。紙の真ん中に「だいこんや」の文字を書いて、周りに“大根を使ったおいしいごはん”の絵を描いていきます。

 

 最後に、値段を決めなくては。「これは1000円」と強気の子どもたちに「ちょっと高すぎるかな~あんまり高いと買えないよ」と先生。そこで、子どもたちがおうちの人とお買い物に行くときに、スーパーの野菜売り場で市場調査をしてくることになりました。その結果、「1本100円にしよう」「変なかたちのは500円」とすべての大根の値段が決まりました。こうしてお店開きの準備が整い、子どもたちの提案による「だいこんやさん」が実現しました。

 

 

看板も自分たちで作りました

 

 

ずらりと並んだ大根は圧巻!!これをぜんぶ売り切りました

 

 「いらっしゃいませ~」 

 だいこんやさんでは、19人全員が店頭に立って呼び込みから販売までこなしました。

 「美味しい大根ですよ。買ってください」「この大根を食べると、世界一幸せになれますよ~」「ちっちゃくても、おいしいですよ!」と、商売上手の子どもたち。そんな子どもたちの呼び声と想いに応えた多くの保護者が来店され、たくさんあった大根はすべて売り切れに!大繁盛でした。

だいこんやさんの売上は「こまってる人をたすけるために」

 子どもたちが約3か月半かけてお世話してきた大根畑の売上金は、11,960円。一週間毎日お菓子パーティができるくらいの金額です。しかし子どもたちの「こまっている人をたすけたい」という意思は変わらず、全額をすぐに本会の「東日本大震災遺児支援」口に寄付してくれました。その後、先生から届いたのが文頭のメールでした。

 

 しかし気になるのは、なぜ子どもたちがこんなにも”人助け”に対する強い意思を持っていて、東日本大震災支援を選んでくれたのかということです。先生にお話を聞いてみました。

 

 石井記念やまばと保育園を運営するのは、宮崎県全土で広く活動を展開する社会福祉法人 石井記念友愛社。「福祉」の概念すら乏しかった明治時代に孤児院を作り、“児童福祉の父”と呼ばれる石井十次氏の築いた福祉文化を受け継ぎ、児童養護施設、保育所、老人デイサービスなどの様々な福祉事業を展開されています。

 

 そんな福祉の精神に基づき保育活動を行っている石井記念やまばと保育園では、日ごろから子どもたちに「困っている人がいたら助けようね」と話しているそうです。また、宮崎県は津波が来る可能性がある地域であることから、地震や津波のことや防災意識についてのお話もしてきたとのことでした。

 

 「今回の発想が生まれたのも、日々、子どもたちに(困っている人を助けられる人になろうと)伝え続けてきたことで、優しさや思いやりが育まれたのかなと先生たち同士で話して喜んでいます!」と先生。

 

 それを聞いて、先生方の温かい心こそが子どもたちの心にある”やさしさの種”を育てて来たのだと納得できました。

 

【後日談】

 後日、この「ちいさなあしながさん」からの心温まる寄付を知った東北事務所の職員と相談し、東北事務所職員や遺児学生とやまばと保育園をオンラインでつないで、交流会を行いました。初めてのオンラインイベントに子どもたちはドキドキ。どんなことを話してくれたのでしょうか?こちらもぜひお読みください。

一通のメールから始まったあしなが育英会と「ちいさなあしながさん」の交流会報告記事はこちら

オンライン交流会に参加してくれた石井記念やまばと保育園の「ちいさなあしながさん」

 

◇◇◇

 

 東日本大震災からちょうど11年目の3月。当時から震災遺児とご家族のサポートに尽力してきた本会は、今でも支援活動を続けています。時間が経ったからこそ必要な支援もあるからです。

 

 19人の「ちいさなあしながさん」と保育園の皆様の想いの込もった大切なご寄付は、東日本大震災で親をなくした子どもたちやご家族のための心のケア活動に使わせていただきます。本当にありがとうございました。

 

 「ちいさなあしながさん」のみなさんが、これからも温かい心を育み健やかに成長されることを楽しみにしています。

 

取材:寄付課 林若可奈

 

【あしながさんインタビュー】に関するお問い合わせやメッセージは寄付課までお気軽にお寄せください。

メール:supporter@ashinaga.org

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