1. HOME
  2. あしながメディア
  3. 今日もだれかの「あのね」に耳を傾けて

今日もだれかの「あのね」に耳を傾けて

コラム 2022.10.13

あしなが育英会では奨学金以外にも、レインボーハウスと呼ばれる「心のケアの拠点」で親をなくした子どもとその保護者を対象に、「グリーフサポート」のためのプログラムを開催している。「グリーフ」は喪失体験によって起こる心と身体の様々な反応を、「グリーフサポート」は自分の喪失体験と丁寧に触れ合えるようにすることをいう。グリーフサポートのプログラムでは、同じように死別体験をした人同士が交流し、自分のグリーフと触れる時間を持つ。

 

コラムシリーズ「あゆみ」では、本会の職員含めグリーフサポートに携わっている人たちに、このような活動をするようになったきっかけ、自身や人々のグリーフと触れ合うなかで感じることなどを紹介してもらう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

私があしなが育英会に勤め始めて、11年半が経った。私がこの活動にかかわるようになったのは、新卒で働き始めた幼稚園を辞め、一般企業で事務仕事をしていたころだった。幼稚園を退職してからも、なにか子どもとかかわる仕事がしたいと考えていた。2010年の夏、近所に住む人から「親を亡くした子どもたちに寄り添うファシリテーター養成講座があるよ」と教えてもらった。これまでは『ボランティア』というものに無縁だった(正しく言うと、ボランティアを考えるほどの余裕が自分にはなかった)。そして新しい環境がとても苦手で申し込んでみたものの、当日の朝も、重い腰がなかなか持ち上がらなかった。しかし参加してみるとあっという間に2日間講座が終了した。

 

その数か月後に、初めて仙台でワンデイプログラムが開催され、初めて子どもたちと出会った。その時のことは今でも鮮明に覚えていて「やっと自分のやりたいことが見つかった」と感じた瞬間だった。そして2回目の子どもたちにあうチャンスを楽しみにしていたところに、3.11の震災が起こった。

 

職員になり、はじめの数年は、プログラムの運営とレインボーハウスの建設に主に関わった。子どもたちの海外研修等への帯同なども含め、子どもや保護者の方と長い時間を過ごさせていただいていた。そして現在は私自身のライフステージの変化もあり、主に事務的な仕事や遺児家庭の方の個別対応、東北にご連絡くださるご支援者様、レインボーハウスの見学者の方の窓口をさせていただいている。

 

今日もだれかの「あのね」に耳を傾けて

 

今回私には何が書けるか考えたとき、ふと頭をよぎった言葉は「あのね」という言葉だった。あしなが育英会のケア関連の記事を見ていただくと「あのね」という言葉をよく目にするだろう。

レインボーハウスでは「あのね」と子どもたちや保護者の方が話せる環境をとても大切にしている。「あのね」の後に、相談事が話されることもあれば、他愛のない会話が始まることもある。どんな「あのね」にも丁寧に耳を傾けたいと思いながら活動をしている。

 

先日、成人した震災遺児の子から「久しぶりに話がしたい」と連絡があった。

数年ぶりの再会だったが、その子は、今は社会人になって地元を出てしまったが、被災した地元のための活動を始めたことを教えてくれた。大変なことも多いようだが、同級生たちと力を合わせて頑張っている姿はとても活き活きとしていた。

 

そしてその数日後、初めてレインボーハウスに見学にいらっしゃった方が「実は…」と、会社をリタイアした今、子どもたちのために物理的な支援だけでなく、ケア活動にも参加したいと思ってくださっていることをお話しくださった。

 

先日職員ミーティングでは「何年も関わっている子から、今まで聞いたことのない話が出てきた」とプログラム担当からの報告。

 

レインボーハウスは「死別喪失体験」を話す場だけではなく、いろんな「あのね」が出てくる。そして「あのね」が出るタイミングというのは本当に人それぞれ。成長や、気持ちの変化、生活環境の変化など。それぞれがそれぞれの立場でいろいろなことを感じている。

 

これまで子どもや保護者の方とかかわることができ、たくさんのお話を聞かせていただいた。震災から10年以上経ったからといって、終わりではない。10年以上経ったからこその「あのね」があるのだ。これからもしっかりと耳を傾けていく大切さを感じる。

 

今日もだれかの「あのね」に耳を傾けるためにレインボーハウスの鍵を開ける。

 

 

 

今野亜紀

宮城県仙台市生まれ。

2011年7月あしなが育英会へ入局。石巻レインボーハウスを中心に子どものプログラムを担当を経て、現在は事務所勤務を中心とし、遺児家庭の個別対応や事務的な業務を中心に行っている。好きな食べ物は「石巻の塩辛」。

寄付で遺児を
応援する

寄付する

Follow Us

あしなが育英会 公式SNS

Mail News

あしなが育英会 公式メールニュース

あしなが育英会の最新情報などをお届けします。

登録する

Contact

お問い合わせ

お問い合わせの前に、「よくあるご質問」をご覧ください。
掲載のないご質問は「お問い合わせ」よりご連絡ください。