高校奨学生の約3割「友人と遊ぶお金ない」 高校生・保護者調査で貧困率53.5%
※2025年12月9日 タイトルの数値〔誤:4割 → 正:3割〕および結果の要点〔誤:「友人と遊びに出かけるお金」が欲しい 36.2%=一般の5.6倍 → 正:29.6%, 5.5倍)を修正しました。
精確な数値は「調査レポート」をダウンロードしてご覧ください。
一般財団法人あしなが育英会は2025年8月から9月にかけて、高校奨学生とその保護者を対象に調査を実施し、12月1日(月)に結果を公表しました。
調査には高校奨学生と保護者あわせて4421人が回答。奨学生世帯の貧困率が53.5%にのぼること、中でも障がい者世帯の困窮度が極めて高いことが明らかになりました。また、「貧困」が、高校奨学生のアルバイトの負担増や、友達と遊んだり自由に部活動をしたりという高校生にとっての「当たり前」を奪う要因になっている実態も浮き彫りになりました。
本調査は、子どもの貧困研究の第一人者である、東京都立大学の阿部彩教授の協力で実施されました。会見で阿部教授は、「今回の調査は、高校生とその保護者の双方から回答を集めたことに大きな特徴がある。子どもの貧困=親の貧困の実態が両者の視点から浮き彫りになり、特に障がい者世帯の困窮が非常に深刻なことに衝撃を受けた」とコメントしました。
また、会見直前の11月29日(土)と30日(日)には、本会初の試みとなる「保護者交流会」を、「あしなが心塾レインボーハウス」(東京都日野市)で開催しました。全国各地から49人の保護者が参加し、生活の中での悩みや不安を分かち合いました。また、調査から見えた課題についても意見を交わし、当事者同士で理解を深めました。
保護者交流会については、後日、別記事で詳しくお知らせします。
もくじ
調査について
結果の要点
- 奨学生世帯の経済的貧困が深刻。その貧困が様々な生活上の問題を引き起こし、ウェルビーイングへの悪影響が懸念される
*ウェルビーイング:心や身体が健やかで、人とのつながりや社会との関わりの中で、自分らしく生きられている“良好な状態”を意味する概念。近年政府や企業、教育現場など幅広い分野でウェルビーイング向上が重要なテーマとして扱われている。
- 回答世帯の平均収入は249.3万円、貧困率は53.5%
・うち勤労収入などは140.9万円。厚労省調査のひとり親平均(母子世帯236万円、父子世帯496万円)より大幅に低い
・保護者の障がいを理由に奨学金を申請した世帯の平均収入は234.1万円と、遺児世帯より低い。貧困率は60.7%と高い
- 約5世帯に1世帯が、過去1年間に税金・社会保険料を滞納した経験あり
・電話代、電気代、ガス代などの料金の滞納経験率は、一般の5~7倍にのぼる
- 52.2%が、過去1年間に「お金が足りなくて食料を買えなかった」経験を有する
- 高校奨学生の剥奪指標(欲しいのにない)に、一般との大きな差
・「新しい洋服」が欲しい 30.7%=一般の9.8倍
・「2足以上のサイズのあった靴」が欲しい 16.4%=一般の6.1倍
・「スポーツや趣味の道具・ウェア」が欲しい 22.3%=一般の5.9倍
・「友人と遊びに出かけるお金」が欲しい 29.6%=一般の5.5倍 など
- 高校奨学生の部活動参加率は、一般より8.4ポイント低い
・背景に家の事情(家族の世話など)、アルバイト、費用などの問題
- 生活や学業の維持継続のためにアルバイトをしている高校奨学生が一定数
・アルバイトの理由:「自分自身の生活費のため」(43.3%)、「学校で必要な物のため」(19.9%)、「世帯にお金を入れるため」(17.5%)
- 高校奨学生の21.7%が「ヤングケアラー」
・親に障がいがある奨学生に絞ると、25.8%が日常的に家族のケア
・高校奨学生は、ケア負担と金銭的困窮の両方を抱えている確率が極めて高い
詳しい結果は、調査レポートをご覧ください。
調査の概要
実施 一般財団法人あしなが育英会
協力 阿部 彩 氏(東京都立大学人文社会学部 教授/子ども・若者貧困研究センター センター長)
名称 第1回あしなが高校奨学生調査
目的 経済的貧困が実際にどのような格差を生み出しているかを明らかにする
対象 一般財団法人あしなが育英会の高校奨学生とその保護者、それぞれ3907人
回答期間 2025年8月6日~9月5日
回答方法 オンラインと郵送の併用
回答数 高校奨学生2157人(回答率55.2%)、保護者2264人(回答率57.9%)
記者会見
あしなが育英会本部事務所(東京都千代田区)で開いた会見では、本会会長の村田治と阿部教授が調査結果を報告しました。さらに、保護者交流会に参加した保護者の中から3人が代表して出席し、プライバシーに配慮した形で実状をお話しいただきました。各氏の発言の要旨は以下のとおりです。
東京都立大学 阿部彩教授

私は長年、子どもの貧困問題に関わってきましたが、今回の調査には革新的な点が三つありました。一つは“高校生を対象にしていること”です。高校生への支援は小中学生に比べ手薄で、授業料免除などはあっても、生活そのものを支える制度はほとんどありません。今回の調査では、高校生自身がアルバイトをしてもなお生活に苦しんでいる姿、部活や友人関係など、普通なら経験できるはずのことを諦めている姿が浮き彫りになりました。
二つ目は“障がい者世帯の厳しさが数値として見えたこと”です。障がいのある親を介護するために、もう一人の保護者が働けない。そのうえ通院費用や介護費用がかかる。つまり二人親世帯なのに、ひとり親以上に深刻な状況に置かれているケースがあるのです。ここを政策としてどう補うかは重要な論点です。
三つ目は“子どものケア負担の分析”です。近年ヤングケアラーという言葉が注目されていますが、今回は『1日の時間をどう使っているか』を細かく聞いたことで、平日に2時間以上家のケアや家事を担っている高校生が少なくないことがわかりました。東京都調査と比較しても、子どもが家族の介護を担う割合が非常に高い。こうした実態を受け止め、政策面での支援をもっと厚くしなければいけません。
あしなが育英会 会長 村田治

今回の調査では、「当たり前のことが当たり前にできない遺児・障がい者世帯の現実」が多くの数字で示されました。私自身、親を早くに亡くし、友達の家の話を聞くたびに胸が苦しくなる経験をしてきました。“友達がしている当たり前のことができない”、“必要なものすら買えない”という感覚は、子どもの心に大きな影響を与えます。
また、高校生のアルバイト負担が非常に重いこともわかりました。4人に1人がアルバイトをしており、そのうち約25%が週15時間から20時間も働いています。勉強や睡眠時間を犠牲にしたり、部活動を断念している実態もあり、経済的な貧困が、さまざまな観点で子どものウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良い状態)を阻害していることも明らかになりました。
さらに保護者の孤立や「時間貧困」など、複雑に絡み合う問題に対し、あしなが育英会として、支援体制をより充実していかなければいけないと強く感じています。
保護者
※プライバシー保護のため顔と名前を伏せています。
主人が突然死して12年になります。下の娘は生後4か月で、実家にも義実家にも頼れず、ひとりで育ててきました。私はアルバイト雇用で、収入は1日7000円です。病院に行くとお金がかかるので、大きな怪我をしても「レントゲン代が払えない」と思って、家で寝て治すしかありませんでした。頭を強く打った日には、「夜中に死んでいるかもしれないから、そのときは救急車を呼んで」と子どもたちに言いました。
息子の制服のズボンは継ぎ接ぎだらけ。三者面談で廊下を歩いてくる姿を見たとき「乞食のようだ」と思ってしまった自分にもショックでした。でも新しい制服を買ってやるお金もなく、似た色の安いズボンを履いて我慢してもらっています。そんなふうに節約生活を送るうちに、息子が学食で500円を使うことにすら罪悪感を抱くようになっており、自分が貧困意識を植え付けてしまっていたことに気づいて涙が止まりませんでした。
あしなが育英会のつどいだけが、年に一度、本音を泣きながら話せる日でした。「つらいよね」「悲しいよね」「パパに会いたいよね」と話せる人たちに会えて、毎月奨学金をいただけて、本当に感謝しています。
私たち親子はあしながさんの善意のおかげで生き延びてきたといっても過言ではありません。この場を借りてお礼を言わせてください。
(九州地方・母親)
夫は9年前、単身赴任先のお風呂場で亡くなりました。年末で、遺体を自宅に運ぶ費用が高くてどうしても払えず、火葬して骨壺だけを娘が抱いて新幹線で帰りました。「私が持つ」と言って、重い骨壺を離さなかった姿が忘れられません。
私が暮らす雪国は冬の灯油代が4割上がり、電気代・防寒具・靴など、どれも高額です。雪かきだけで2〜3時間かかる日もあります。家では子どもが心配するから泣けないので、外で雪かきをしているときだけ泣いて、雪が片付くと自分の心もすっきりする、そういうことを繰り返しながら生きてきました。
保護者交流会では、夫を亡くして以来ほとんど初めて、人から大事にされて、寄り添ってもらえる経験をしました。お会いしたお母さんたちと「この支援が、自分たちと同じように困っている人、今は支援につながれていない人にも届くようにしたいね」と話し合いました。人の優しさってすごいな、あしながの活動ってすごいなと心から思いました。(東北地方・母親)
夫が脳腫瘍と診断されたのは、緊急事態宣言が明ける前でした。手術を受け命は助かったものの、右半身の感覚障害と高次機能障害がのこり働けなくなりました。医療費は毎月10万円以上。保障制度も複雑でどこまで適用されるかわからず、申請の際もたらい回しにあいました。
私自身は看護師として働いていますが、夫の介護のため正規雇用にはなれず、派遣のアルバイトや最低賃金のパートなどで生活してきました。息子はスポーツ推薦で高校に進学し、競技用シューズやユニフォーム代、寮費の値上がりなどが家計を圧迫しています。ただ部活をやめさせると特待生枠から外れて学校を続けられなくなるので、なんとかするしかありません。
夫は障害の影響で怒りっぽくなったり物忘れが激しくなり、一緒にいて心がすり減る日もあります。それでも、あしなが育英会の支援のおかげで「頑張ろう」と思えています。
交流会でもたくさんの親御さんの話を聞き、「つらいのは自分だけじゃない」と救われました。助けてもらえていることに心から感謝しています。
(近畿地方・母親)

まとめ
今回の調査では、あしなが高校奨学生世帯が抱える困窮の実態と、高校奨学生の生活における複数の問題が明らかになりました。高校奨学生と保護者は、「贅沢がしたい」のではなく、「周りの人が当たり前にできていることをできるようになりたい」と願っているだけです。しかしその「当たり前」が、貧困によって損なわれている現状があります。
本調査にご協力くださった東京都立大学の阿部彩教授からは、「政府の支援が届きにくい世帯に、あしなが育英会の奨学金が確実に届いていることに、改めて意義を見出した」との言葉をいただきました。
物価高騰を始めとして、奨学生世帯を取り巻く社会的な課題は山積しており、時間貧困や体験格差など、お金の問題だけでは解決しない障壁も多くあります。あしなが育英会は、貧困によって子どもたちの将来が閉ざされることのないよう、奨学金をはじめとした必要な支援に全力で取り組んでまいります。また、今後も継続的な調査を行い、困窮の実態を可視化するとともに、奨学生や保護者の生の声を社会に届けることで、子どもの貧困の解消に寄与していきたいと考えています。
子どもたちが当たり前の生活を送れるよう、どうかご支援ご協力をお願いいたします。
報道機関のみなさまへ
本件についてのプレスリリースは、下記よりご覧ください。
報道機関の方からのお問い合わせ先
一般財団法人あしなが育英会 広報部(担当:島田)
電話:03-3221-0888(平日9時から17時)
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