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津波遺児家庭をアートで10年間応援|金沢美術工芸大学コラボワークショップが最終回

金沢美術工芸大学(以下、金沢美大)の学生サークルと三谷産業株式会社(以下、三谷産業)の協力により、2016年から東北のレインボーハウス(仙台、石巻、陸前高田)で開催されてきた「金沢美大ワークショップ」。毎年、美術大学ならではの材料や手法を用いて、趣向をこらした内容のワークショップが行われてきました。 

今年は、レインボーハウスでのワークショップとして10回目の節目を迎え、惜しまれながらも最後の開催となりました。金沢美大生にとっても、参加する子どもたちにとっても特別な時間となったワークショップ最終回を取材しました。

このワークショップでしかできない体験を子どもたちに 

今年、金沢美大生が用意したワークショップは3つ。美しい色や素材を練りこむ「手作りせっけん」、自分で目や髪の毛をデザインする小さな顔型の「マグネット人形」、そして、「くす玉」作りです。 
 
このワークショップの魅力は、美大生たちがアートの知識を生かして、ものづくりの経験がほとんどない子どもや大人でも、本格的な作品づくりを楽しめるようにと、工夫をこらした素材が用意されていることです。

 

今回使ったマグネット用の顔型やくす玉の球体部品は、美大生たちが3Dプリンターを駆使して、時間をかけて手作りしました。こうした入念な準備が、”誰もが簡単に作業できること”と”美しく満足度の高い作品作り”を両立させており、参加者に充実した体験を提供してくれています。


飾りもの

想像力をかきたてる色や形がたくさん。「パーツをみているだけで楽しい」と子どもたちは嬉しそう

誰もが無心になれるものづくり

手作りせっけん

素材せっけんを湯せんでとかしてせっけん液を作り、そこに専用の絵の具やアロマオイルを入れて、型に流し込みます。ドライハーブやラメなど、デコレーション用の素材も用意されていて、好きなように装飾することもできます。

 

アイスクリームの型やお菓子の型にせっけん液を注ぎ入れて30分ほど冷やし固めると、お菓子と見まごうような可愛いせっけんができあがりました。「おいしそう!まるでグミキャンディーみたい」「お母さん、間違えて食べないでね」と、歓声と笑い声が絶えませんでした。 


せっけん

好きな香りを加えると、泡立てるたびに香ってきます

 

顔型マグネット人形

金沢美大生があらかじめ用意した青や緑やピンクなど色とりどりの顔型の台に、参加者が好きな色の毛糸や目玉シール、デコレーションパーツを貼り付けて表情豊かな「顔」を作るワークショップです。学生が採用した素材は表面に少し凹凸があるつやのないシリコンで、接着剤が定着しやすくなっており、小学生でも扱うのが簡単でした。裏面にはマグネットが付いていて、上部にひもをつけるとキーホルダーにもなります。

 

家族全員分の顔を作る子どもや、「好きなアイドルユニットをつくる」と、配色の違うデザインでいくつものバリエーションを作って楽しむ参加者がいました。最後はそれぞれの作品をボードに貼り付けて楽しみました。

 

顔型マグネット

子どもも大人も、制作中は無言で没頭

 

くす玉

金沢美大ワークショップのフィナーレを彩る、大事な「くす玉」を作りました。参加者が用意するのは、金沢美大生が事前に用意した大きなくす玉と並べるための、小さなくす玉。白い半球パーツを好きな色に塗ったり飾ったりします。ワークショップを担当した美大生は、「きれいにバランスよくパカッと割れるよう、球体は何度も試作を重ねました。簡単に見えて、計算されているんですよ」と、パーツ作りの苦労を教えてくれました。

 

くす玉づくりは、女の子よりも男の子の心をつかんだようです。「模様のアイディアや開いたときの垂れ幕の『オチ』を考えるのが楽しい」と、創作ポイントを語る子も。オチを楽しんでもらうために、手のひらで覆い隠しながら作る子や、凝ったデザインの球体にする子もいました。細かい紙吹雪を仕込むなど、一つひとつのくす玉にアイディアがたくさん盛り込まれました。

 

くす玉

大好きなアニメをイメージして

 

ブラジルくす玉

色とりどりのくす玉がならびました

 

アートの力で元気になって欲しい

このワークショップの始まりは、2人の金沢美大生でした。東日本大震災の後、東北出身の学生とその友人が被災地を訪れ、子どもたちに向けたワークショップを開きました。「被災者の傷ついた心を、アートやものづくりで少しでも癒すことができたら」という思いで開いた、小規模なものでした。 
 
回を重ねるうちに、地元金沢の新聞が彼らの活動に注目。紙面にワークショップの記事が掲載されました。その記事をきっかけに、「『もの』よりも『こと・場』で東北の被災地を支援したい」と考えていた三谷産業が旅費と材料費の支援を申し出ました。そして、東北レインボーハウスで津波遺児向けの活動を始めていたあしなが育英会が開催場所を提供するという形で、3者のコラボレーションがスタートしたのです。

 

10年間で、のべ113人の子どもと保護者に、アートとものづくりを通じて「日常」から離れ、創造の世界に没頭する時間を届けてきました。

 

大くす玉

フィナーレは、皆で「大くす玉」を割りました

 

10年間で行ったワークショップの一覧

・2016年 (石巻)藍染、マーブリング教室

・2017年 (石巻)木工ワークショップ(椅子・時計・ブックスタンド)

・2018年 (石巻)貯金箱・水引・フェルトボール

・2019年 (石巻)木のランプづくり・起き上がり小法師・水引

・2020年 (オンライン)木琴・ギター・太鼓・糸掛け曼荼羅

・2021年 (オンライン)アクリルのランプシェード・サンキャッチャー・水引

・2022年 (仙台)ジオラマ作り・竹工作・ペーパークラフト飛行機づくり

・2023年 (仙台)真空成形で照明づくり・刺繍集風フレームづくり・レインボーハウスの看

板作り

・2024年 (仙台)木材染めスツール・ポスト・アクリル植物・走るミニカー

・2025年 (仙台)アート石鹸づくり、マグネット人形・チャーム人形、くす玉づくり

コメント

ワークショップサークル部長のえみりさん

金沢美術工芸大学は美術系の大学なので、企業と協働でプロジェクトを行う産学連携のサークルは他にもあります。でも、このサークルが特別なのは、先輩がリクルートした学生だけが参加できるところです。被災地を訪れ、心のケアプログラムの一環として行う活動なので、「あの子は向いているのでは?」と思える後輩にだけ声をかけて勧誘しています。だから、新入生は毎年2人くらい。部員は総勢10人ほどです。メンバーはそれが誇りでもあって、楽しみながらも真面目に、真剣に、企画して準備しています。

デザインがあると、会話が生まれるし、いろいろな問題も解決できるし、見る人の感情に訴えることもできます。あらゆる年代の方と関わりやすくなるのが魅力です。デザインする楽しさを分かち合えるのが一番いいです。

金沢美術工芸大学ウェブサイト(外部リンク)

 

三谷産業株式会社 黒須さん

 

三谷産業株式会社は、「利益を上げる」という企業の目標のほかに、「社会を良くする」を大切な理念として掲げています。震災の後、食器など「もの」の提供をしていたのですが、時間の経過とともに社内から「こと・場」の提供をしたい、という声が上がって、2016年から金沢美大のワークショップに関わるようになりました。熊本の震災、能登の震災、各地の大雨の被災地などに出向いて支援をしてきました。

支援は長く継続してやっていく、ということが大切だと感じています。これからは、このワークショップも能登に場を移して、息の長い支援をするつもりでいます。

三谷産業株式会社ウェブサイト(外部リンク)

 

参加者の感想

 

「去年の金沢美大のワークショップがあまりにも楽しかったので、あの後から金沢美大生のお兄さんの写真を携帯電話の待ち受け画面にしています。僕も、将来、金沢美大に行って勉強したいです。目標です」(高校生)  
 
「ものづくりはいいなぁという気持ちがよく分かりました。2時間半あっという間でした」(参加者男性) 
 
「今まで作ったものは全て、夫の仏壇に飾っています。私たちには数時間のワークショップですが、みなさんはとても時間をかけて準備してくださったことに感謝しています」(参加者女性) 
 
「始めて参加しましたが、全部楽しかったです。いつもはひとりなので、みなさんが、ずっと以前から知っている人のように話しかけてくれたのが一番嬉しかった」(参加者男性) 
 
「一生懸命準備して、それを披露して、みなさんが喜んでくれているのをみて、何かの役にたっているのだということに感動しました。自分もすごく楽しめました」(金沢美大生) 

 

投稿者

田上 菜奈

あしなが育英会では、会長室、アフリカ事業部100年構想を経て、現在は「保護者相談室」に所属。保護者からの相談の受付や保護者向け講演会の開催などに携わる。「保護者インタビューまなざし」をはじめ、いくつかのインタビュー記事を執筆している。

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