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支えられてきた20年―成人式を迎え、今伝えたいこと

迷いの先にあった「進学してよかった」と思える日々

「これまでの20年を振り返ると、辛いことの方が多い日々でした。でも今、大学で自分の興味のあることを勉強できています。難しい内容も多いですが、より本質的な部分に触れられているという実感が湧いて、とても楽しいです」

 

そう語るのは、今年、成人式を迎えたあしなが大学奨学生の新井さんだ。幼いころから科学に興味を持ち、中学生になると数学に強く惹かれるようになった。高校生のとき、「数学教員になる」という将来の夢に出会い、大学では数学科に進学した。現在は特定の分野に絞らず、数学のさまざまな領域に触れながら知見を広げている。多様な分野を専門とする教員の話に触れるたび、知的好奇心が刺激され、さらに深く学びたいという意欲が高まっているという。

 

充実した大学生活を送る新井さんだが、これまでの20年を振り返ると、決して平坦な道のりではなかった。

「僕が小学1年生の時から5年間、父は単身赴任をしていて、あまり一緒に過ごせませんでした。そして小学6年生の3月、卒業式の直前に父が亡くなりました。当時は、この先どうなるのだろうという漠然とした不安の中で過ごしていました」

 

中学2年生の終わりには引っ越しを経験したが、ちょうどコロナ禍が始まり、友人たちに会えないまま突然離れ離れになった。転校直後で気の合う友人もおらず、わからないことばかりの環境の中で高校受験を迎えた。経済的に進学できるのだろうかという不安も重なり、悩む日々が続いた。

 

「家庭も荒れていて、当時は心の休まる場所がどこにも無く、それが永遠に続くかのように感じていました」

 

そんな中、高校進学の際に新井さんはあしなが奨学生となった。あしなが奨学金があれば大学進学も視野に入ると知り、数学教員という夢を現実のものとして思い描けるようになった。そして大学進学は、新井さんの世界を大きく広げてくれた。

 

最近では、教員を目指す学生が集まる勉強会に参加し、志の高い仲間と語り合う時間を重ねている。年齢や立場の異なる人と意見を交わす機会も増え、学問だけでなく、人との関わりの中で多くの学びを得ている。

 

「心から、大学に進学できてよかったと思っています」

勉強だけでなく、人との出会いや対話を通して、自身の成長を実感する日々を送っている。

 

勉強の傍ら、「あしなが学生募金事務局」の局員として後輩遺児の支援にも力を注ぐ(明治安田生命保険相互会社による「あしながチャリティー&ウォーク」にて)

成人式を迎え、こみ上げる感謝の気持ち

1月12日、新井さんはスーツに身を包み、地元で行われた「はたちの集い」に出席した。成人式に参列したことで、「自分はもう大人なのだ」という実感が、少しずつ湧いてきたという。

 

「はたちの集い」会場で友人たちと

 

そんな新井さんの目指す大人像は明確だ。

「他人を決して見捨てない人でいたいです。自分の周りで何が起きていて、どんな問題があり、自分に何ができるのかを自覚した大人になりたい。その上で、誰かに気づきを与えられる存在でありたいと思っています」

 

寄る辺ない気持ちで不安を抱えながら過ごしていた10代の頃、今の自分の姿や未来を想像することはできなかった。

「辛い時期、そばでずっと支えてくれた母や祖父母、親戚の人たちに、心からありがとうと伝えたいです。そして、これまで多くの方に支えてもらった分、これからは恩返しをしていきたいと思っています」

見えない支えに背中を押されて

支えてくれたのは家族だけではない。これまで出会い、つながってきたすべての人の存在が、今の自分を形づくっていると感じている。そして、その中には、直接会ったことのない人たちもいる。

 

顔も、どこにいるのかも知らないが、夢へと続く道を後ろからそっと支えてくれている存在――それが、新井さんにとっての「あしながさん」だ。

 

街頭募金に立ち、多くの人が行き交う通りで声を上げたとき、足を止め応援してくれる人たちの姿に、「あしながさん」の存在を強く感じてきた。「あしながさん」に宛てたハガキを書いて返事をもらったときは、とてもうれしかった。

 

「あしながさんは、僕たちの目の前に直接現れることがなくても、いつも見守ってくださっている。その温かさは確かに伝わっています。まだまだ未熟ですが日々成長していくので、その姿を見てほしいです」

 

最後に、亡き父に伝えたいことがあるか尋ねた。

「成人式での晴れ姿を見せられたらよかったなと思います。これまで迎えた入学式や卒業式といった行事に、父がいたことはなかったので。もっといろいろな姿を見せてあげたかったし、他愛のない話もたくさんしたかったです」

父の不在は、新井さんの子ども時代にさみしさを残した。それでも、多くの人に支えられながら成長し、幼い頃には見えていなかった未来への道筋を考えられる20歳になった。これからは、一人の大人として、自分の人生を描いていく。

投稿者

林 若可奈

大学進学後、両親の離別により経済的困難を経験。当時の体験より、「自分の力ではどうにもできない環境や境遇にある青少年が、多様な可能性にアクセスできる社会をつくりたい」との思いを抱き、青少年支援の道へ。2016年に入局し、会長秘書、インターンコーディネーター、マーケティング部、寄付課、ウェブ担当などを経て、現在はデジタル広報を担当。ウェブ記事やSNSを通じて遺児家庭と社会とをつなぐことを目指し、日々奮闘している。

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