あしながさんのおかげで卒業できました!|あしなが奨学生2千人 巣立ちの春
桜のつぼみがふくらみ、あたたかな光が街を包み込む季節になりました。あしなが奨学生たちにも、巣立ちの春がやってきました。
この春、学校の卒業などにより、あしなが奨学金の交付を終える奨学生は、2181人(高校1371人、大学967人、専修各種学校97人、大学院16人)にのぼります*。
親との死別や親の障がい、経済的困難や不安を抱える日々のなかで歩んできた道のりは、決して平坦なものではなかったはずです。それでも前を向き続け、それぞれの学びを修めました。これから、進学や就職など、次のステージへと進んでいきます。
本記事では、小学生の頃からレインボーハウスのプログラムに参加し、あしなが奨学金を受けて大学に通い、この春卒業を迎えたタカヒロさんへのインタビューを通じて、奨学生が過ごした充実した学生生活をご紹介します。
*本会は原則として卒業まで奨学金を交付していますが、辞退等により卒業前に交付が終了する場合があります。ここで示した人数は、2026年3月をもって奨学金交付が終了する奨学生の数です。
あしながさんに支えられたタカヒロさんの13年
父との別れとレインボーハウスとの出会い
兵庫県神戸市で生まれ育ったタカヒロさんは、小学校5年生の時に父を亡くしました。「聡明で、でも茶目っ気もある、とても優しい人だった」というお父さん。亡くなったことを知ったのは、自然学校からの帰りのことでした。
「その日は、いつも迎えに来ていた母の代わりに、兄が迎えに来ました。そして、二人で家に帰る途中に通った踏切が、今でも忘れられないんです。景色が白黒に見え、どこか違う場所に来てしまったような感覚がありました」
父との別れの後、元気を失い、抱え込んでいた思いもあったといいます。そんななか、小学6年生のときに母親に連れられて初めて訪れたのが、神戸レインボーハウスでした。
ふさぎ込んでいたタカヒロさんに、レインボーハウスのファシリテーター(ケアボランティア)は優しく寄り添ってくれました。「レインボーハウスは、しんどい気持ちをそのまま出せる、安心できる場所でした」と振り返ります。

インタビューに答えるタカヒロさん
念願の大学生活 自信を持てた募金活動
中学生まで定期的にレインボーハウスに通ったタカヒロさんは、高校生活と2年の浪人生活を経て、2021年に地元の大学の経済学部に入学しました。経済学部を選んだのは、「これから社会の一員として生きていくうえで、きちんとした視点を持ちたかったから」。念願叶っての大学入学でした。
そして大学奨学生として、再びあしなが育英会とつながることになります。高校は奨学金がなくてもなんとか通うことができましたが、大学は浪人を経てからの進学ということもあり、家計への負担に対する思いも抱えていました。あしなが奨学金が、大学生活の大きな支えとなったと話します。
「小・中学生の時にたくさんお世話になったので、その恩返しをしたい」という思いから、あしなが学生募金や奨学生のつどいなど、後輩遺児を支えるあしなが運動にも、積極的に参加しました。
「大学3年生の春に、池田駅(大阪府池田市)での街頭募金の拠点責任者を任されたのですが、雨が降ったり、ボランティアスタッフの人数が多かったりと大変で。でも仲間の協力もあり、なんとか最後までやりきることができました。思えばそれが、大学生活の中で初めての“成功体験”と呼べるものでした」
コロナ禍まっただ中に始まった大学生活。さらに、浪人もしていたため、大学のほとんどの同級生は年下で、なかなか距離を縮めることができなかったといいます。そんな時に学生募金事務局のメンバーになり、心から分かり合える仲間と、本気で取り組める活動に出会いました。

タカヒロさん(右から4番目)の“成功体験”となった池田駅前での募金(2023年4月30日)
海外研修への挑戦
初めての成功体験から自信を得たタカヒロさんは、さらに大きなチャレンジをします。大学3年次を終えた後、1年間休学をし、「あしなが海外留学研修制度」を利用してトルコに渡ったのです。
トルコでは、派遣先のコジャエリ大学に通い、トルコ語を学びながら、現地の大学生や子どもたちに日本文化を伝える活動に取り組みました。「とにかく視野と価値観が広がった、人生の中で最も充実した1年間でした」と話します。

日本文化イベントで折り紙を教えるタカヒロさん(本人提供)
帰国後は就職活動や卒業論文に取り組むかたわら、あしなが運動でも活躍。ラーニングサポートプログラム(小中学生遺児へのオンライン学習支援)の伴走役である、ラーニングサポーター(ボランティア)にも手を上げました。
「実は塾講師のアルバイトをしていたんです。ラーニングサポーター募集の話を聞いたとき、自分の経験を活かせると思って」
大学卒業間際まで、2人の小学生に、週1時間ずつ算数と英語を教えました。
「恩返しをしたい」という思いで、大学2年生の時から関わり始めたあしなが運動。「かけがえのない経験と、最高の仲間を得ることができました」と目を輝かせながら、振り返りました。

今年の大学奨学生のつどいでは、運営を担う学生チームのリーダーである「運営隊長」として、総勢124人の学生が参加したつどいを支えた(2026年2月16日)
あしながさんへの感謝を胸に社会へ
2026年3月18日、タカヒロさんは大学の卒業式に臨みました。
「あしながさんのおかげで、卒業を迎えることができました。初めてレインボーハウスに行った日から13年間もお世話になり、感謝しかありません。あしながさんの温かい気持ちを感じながら、今日までたくさんの経験を重ねることができました」。
4月からは地元を離れ、神奈川県のIT企業で働きます。
「まずは与えられた仕事をきちんとこなして、経験値やスキルを増やしていきたいです」と意気込みを語り、そして、「いつかは世界を舞台に大きな仕事をできたら」と胸を膨らませていました。
卒業生2千人の春 それぞれの物語
タカヒロさんだけでなく、2千人の卒業生一人ひとりに、それぞれの物語があります。
その物語に光を照らしてくださったのが、全国にいるご寄付者の「あしながさん」です。みなさまのご支援が、奨学生の学生生活を豊かなものにし、学び挑戦する背中を支えてくださいました。深くお礼申し上げます。
4月からも学び続ける奨学生たち、そして、この春新たに奨学生となる子どもたちもいます。これからも、学生たちの学びと成長、たくさんの笑顔をご報告してまいります。どうか、引き続き見守り応援してください。











