子どもたちの「あのね」
親というかけがえのない存在をなくした子どもたちのグリーフ(喪失体験に伴い表現される感情や反応)を受け止め、交流し、自分らしくいられる安心安全な居場所、それがレインボーハウスです。全国に5箇所(兵庫県神戸市、東京都日野市、宮城県仙台市、石巻市、岩手県陸前高田市)あります。
レインボーハウスでは、子どもたちの十人十色の「あのね」・・・が聴こえてきます。
親を亡くし、子どもは様々な想いを抱え自分の人生を生きていきます。悲しみ、怒り、恋しさ、悔しさ、時には言葉では表現できないような感情に包まれることもあるでしょう。
ずっと走り回りほとばしるエネルギーを発散する子、静かに過ごす子、好きな作品作りに没頭する子、レインボーハウスの友だちやファシリテーターとお喋りを楽しむ子。
子どもたちは、全身全霊で、その時の彼ら自身を表現しています。そして、レインボーハウスには彼らの「あのね」に耳を傾け、心に寄り添い続けるファシリテーターや親を亡くしたという同じ体験をした仲間がいます。
そのような環境の中で、少しずつ少しずつ、自分のペースで、自分自身と触れ合いながら、彼ら自身の力で、亡きお父さんやお母さんへの“あのね”が生まれてきます。子どもたちから紡ぎ出された“あのね”は、作文や手紙、絵、作品、遊び、言葉、様々な形となって表現されます。どれもから、彼らの尊き心を感じます。

亡くなったお母さんを想い描いた絵(小3)
「お父さんは小さい神様」(小6)
父の日の時は、いつもお仏壇の前に家族3人並んで、お線香をあげています。父の日のごはんは、お父さんが好きだったハンバーグを、お母さんと私とお兄ちゃん3人で作っています。出来上がると小さいお皿に、1切れのハンバーグとソースをかけて、お仏壇の所においてお線香をあげています。
父の日の時、私はいつも、「父の日おめでとう」と、お仏壇の前に正座をして、手を合わせて、毎年ずっと言っています。でも時々、「父の日おめでとう」と、「いつまでも見守っていてください」という言葉をかける時もあります。命日の日は、ハンバーグではないけど、父の日と同じように、お仏壇の前に座って父の日と同じ言葉をかけています。
私はお父さんのことを、小さい神様だと思っています。たとえば、なにかのテストで、合格しなければならないときには、前日に、お仏壇の前に立って、「お願いします」と願っています。だから、お父さんは、小さい神様です。
作文集「父の日にお父さんはいない」より抜粋
そんな親を亡くした子どもたちの、時に柔らかな、時に激しい、その時々の十人十色の“あのね”に寄り添うことは、コロナ禍で人との繋がり方が多様になってきた今だからこそ、大切なことを教えてくれるのかもしれません。
亡き親へのグリーフと共に生きながら、他者を思い、自分自身や自分の未来へ眼差しを向けていく。グリーフワークは尊き生きる旅ともいえるように思います。
文:峰島里奈(心のケア事業部 神戸レインボーハウス)