おねがい、パパもう1回でも会いたいです|遺児の作文紹介
あしなが育英会の心のケア事業では、日本各地のレインボーハウスで、親を亡くした子どもたちの気持ちや痛みを表現することを手助けするグリーフサポートプログラムを開催しています。
プログラムでは、遊びやおしゃべりを通して、自分の気持ちに丁寧にふれることを大事にしています。これまでの28年間に、多くの子どもたちが、その時々の自分の気持ちや体験を作文や手紙にしたためてくれました。
そして、それらの手記は本会がいくつかの作文集にしてきました。
今回は、それぞれが短冊に願いを込め、笹につるす七夕にちなんで、亡き人に対する子どもたちの願いをご紹介します。
子どもたちの願い
パパへ
パパ、今どこでなにをしていますか。私はいま勉強したり、友達と遊んだりしています。
パパ、私とママはパパがいなくてすごく寂しいです。もう1回一緒に海に行きたいです。
おねがい、パパもう1回でも会いたいです。
パパ、今ママに口癖がついたの。
なんて言うかというと、私が何かの準備が遅れると、「今手伝ってくれるパパがいないんだから、ちゃんとしなさい」って言われるんだよ。
ねぇパパ、何とかしてください。おねがいします。
今、将来の夢で迷ってるんだ。学校の先生かお医者さんになろうか迷っているんだ。
ねぇ、パパはどっちがいいと思う。
なんで学校の先生がいいかというとね、学校の先生は優しいし、みんなに勉強教えられるから、私は良いと思います。
でもお医者さんは、もし今わたしが大人でお医者さんだったら、パパも救えたかもしれないし、パパ以外の人も救えるかもしれないからです。
おねがいです。もどってきてください。
小学2年生・女子
『こころに虹がかかるまで~親を亡くした子どもたちの作文と成長記録~』より
病気の人を笑顔にしたい
プログラムで同じ体験をしたことのある友達に話をして、気が軽くなりました。
みんなもいろいろつらいことがあって、ぼくだけではないなと思いました。色々お父さんとの思い出をみんなの前で言えて、どう伝えていいかわからなかったけど、自分の気持ちを素直に言えてよかったです。
今でもまたお父さんと一緒にスポーツをして遊んだり、いつも行っていたゲームセンターとかに行きたいです。今はまだ悩みとかがあるので、またつどいとかに来たらファシリテーターに相談したいなぁと思いました。
僕もお父さんみたいなすごい人になりたいなぁと思いました。
最後に、僕もファシリテーターみたいな優しい人になりたいなぁと思いました。
科学者になって薬を作り、お父さんみたいな病気の人を幸せにして笑顔にしたいです。
でも科学者になるためには、すごい年月がかかるけど、お父さんみたいな病気にかかっている人のためにも、お父さんのためにも頑張りたいなぁと思いました。
小学6年生・男子
『わたしだけじゃないんだ~親を亡くした遺児たちの作文集~』より
ぼくの速くなった球受けて
ぼくのお父さんは、ぼくが小学校3年生のときに、肺がんで死んでしまいました。
お父さんが死んでしまう前は、家でお父さんが帰ってくるのを楽しみに待っていたけど、お父さんが死んでしまった後は、すごく寂しかったです。
お父さんが死んでしまって一番困ってしまったことは、前のように野球ができなくなったことです。
お父さんが亡くなってから辛かったことは、一緒にまたキャッチボールができなくなったことです。
今のぼくは体も成長して、元気に暮らしています。
だから今の僕の速くなった球をお父さんにとってもらいたいです。
僕もいつかお父さんと同じところに行くと思うので、待っててください。
早くお父さんに会いたいです。
小学6年生・男子
『亡きお父さんお母さんへの手紙「全国小中学生遺児のつどい」~参加者の作文集~』より
「会いたい」と思う気持ち
子どもたちが亡き人と一緒に何かをしたいと思うこと、もう一度会いたいと思うことは切実な思いです。
これらはグリーフ(喪失に伴う様々な反応)と呼ばれ、健全で自然な反応です。
グリーフは「悲嘆」と日本語訳されることが多いですが、子どもたちの気持ちにもあるように、亡き人を思慕することや愛惜の感情を抱くことも含まれます。
子どもたちはレインボーハウスで自分の気持ちに丁寧に触れ、亡き人とつながり続けます。