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「立派な人になりたい」父を亡くして10年、後輩に伝えたい思い。【LSPインタビュー vol.9】 

その他 2023.03.07

 
あしなが育英会は2020年10月より、小中学生対象の学習支援「ラーニングサポートプログラム(LSP)」という取り組みを行っています。LSPでは本会奨学生の大学生が中心となり、遺児家庭の小中学生にオンラインで学習指導を主とするサポートをしています。     
◇ラーニングサポートプログラム(LSP)の詳細はこちら    


今回は、あしなが奨学生でラーニングサポーター(LS)もしている大学2年生のハルナさん(仮名)に、どのような思いでLSPに参加しているのか、あしながの後輩に伝えていきたい思いなど、お話を聞きました。  
 
ハルナさんの担当LRアイカさんへのインタビュー記事はこちら

※LS:LRの学習サポートをしているあしなが育英会奨学生を中心とした大学生    

※LR:LSのサポートを受けている遺児家庭・障がい者家庭の小中学生

 

やりたいことを実現する手助けを

小さい頃から楽しんでいるDSゲームのヨッシーアイランド)
 


――ハルナさんについて自己紹介をお願いします。 
文学部の大学2年生で、主に社会学を学んでいます。まだ2年生なので詳しい専門分野はないですが、今は福祉の領域に興味があります。趣味はゲームをすることで、小さいときからDSやスマホゲームなどいろんな種類のゲームを楽しんでいます。 

 

 
――あしなが育英会について知ったきっかけは何ですか? 
高校の先生があしなが育英会を教えてくれて、奨学生に申し込んだことがきっかけでした。  
 


――その後LSPに参加しようと思ったきっかけは何ですか? 
LSPを知ったのが大学1年生の2月だったのですが、その時がちょうど自分の父が亡くなってから10年が経ったタイミングでした。精神的にも区切りがついて、これからは悲しんでばかりではなく自分自身が立派な人になりたいと思っていました。そこで自分が人の役に立てることはないかと探していた時に、LSPの話を聞いてやってみたいと思い参加しました。 
 


――10年の区切りで自分にできることを探した結果LSPに出会ったのですね。以前から教育には興味があったのですか? 
そうですね。元々個人契約の家庭教師のアルバイトをしたことがあったので、自分にできることはなんだろうと考えた時に、勉強を教えることならできるのではないかと思い参加を決めました。 
 


――あしなが奨学生としてLSPに参加する特別な思いはありますか? 
自分と同じように親を亡くしていたり障がいがある家庭の子どもは、他の家庭に比べて将来の夢や学業の面で制限を受けたり、何かしら諦めないといけないことが出てくると思っています。私自身も生活にとても困ったことはないのですが、やりたいことや将来が制限されることが少なからずありました。例えば大学進学を考える時に、本当は東京の私立大学にも興味があったのですが、金銭的な問題で実家から通える国公立じゃないとだめかなと考えたこともありました。なので、LSPの学習支援を通して、自分と同じ環境の遺児が自分のやりたいことを実現したり、諦めないといけないことを減らす手助けができたらいいなと思っています。 
 

雑談も楽しめる関係に 

――LSPのセッションではどのようなことを行っていますか? 
中学3年生のLRのアイカさん(仮名)と相談をして、基本的には毎週金曜日の19時から1時間と決めてセッションを行っています。勉強内容に関しては、セッションの度に今日やりたいことを聞いています。例えば学校の宿題があれば宿題をやったり、定期テストが近ければ試験勉強を行ったりしています。

私がずっと教えるというよりは、アイカさんが問題を解いている時にビデオをつなぎながら見守ることで気が緩まないようにしたり、何か躓いたときにはアドバイスをしたりと臨機応変に進めています。 
 


――セッションの中で工夫していることはありますか? 
はじめの5分と終わりの10分で、アイカさんと日常生活であったことを話す時間を作っています。この時間では勉強についても話しますが、祝日の話や学校であったことなど他愛もない雑談をしてコミュニケーションをとっています。アイカさんは明るく接してくれる子なのではじめて会った時から壁は感じたことはないのですが、一度アイカさんが忙しい時期があり、休みにするか聞いた時に「やりたいです!」と言ってくれた時は、お互いに打ち解けられているのかなと実感しました。 
 

 

水族館に行った時に見つけたキュートなカワウソ

やる気を引き出し、選択肢を広げられるLSP 

――LSPをやっていてどんな時にやりがいを感じますか? 
以前アイカさんのお母様から「学校から帰ってきて疲れていても張り切ってLSPに参加しています。アイカさんの良いところをうまく見つけて褒めてくれてありがとうございます」のようなメッセージをいただいた時はとても嬉しかったです。アイカさんのやる気を少しでも引き出せていると思うととてもやりがいを感じます。

当たり前ではあるのですが、やる気を引き出すために、その日にできるようになったことや良かったことを毎回見つけるようにしています。また純粋に、雑談やセッションの時間を通してアイカさんと仲良くなれたと感じるときも、とても嬉しく思います。 
 

 

 

LSPセッション中のLSハルナさん(左)とLRアイカさん(右)

 


――LSPのいいところはどんなところだと思いますか? 
塾の先生や家庭教師とはまた違う、気軽に話せる近所のお姉さん的存在ができるところだと思います。自分が中学生の時に気軽に話せる大学生の存在はいなかったので、そのような人がいることで親に話せないことでも話せる場所になるのかなと思います。また、勉強が全てではないにしても、勉強の習慣がつくと将来の選択肢がすごく広がると思います。遺児は選択肢が狭まりやすい状況にある子どもが多いので、LSPでの勉強の機会や大学生との繋がりを通して、いろんなことを諦めず挑戦していけるのではないかと思います。 
 

同じ境遇の子たちの役に立ちたい思いが自信にもつながった 

――ハルナさん自身の中で変わったことや新しく学んだことはありますか? 
さっきは中学生が大学生と関わる機会があまりないことを挙げたのですが、裏を返せば自分も中学生と関わる機会があまりないので、コミュニケーションの取り方など新しく学ぶことが多いです。私は兄弟の中でも一番下として育ったのでどのように話せばいいのか不安に思っていたのですが、LSPを通してアイカさんと話すことで苦手意識もなくなっていきました。その後個人経営の塾でバイトを始めたのですが、中学生との関わり方がすごく円滑になったと実感しました。普段関わらない世代と近い距離で話せることは、自分にとってもすごく楽しく学びになっています。 


また気持ちの面では、私も小学生の時に父親を亡くして困ったことや悲しい気持ちもたくさんあったので、同じような境遇のランナーの助けになりたいと思うと同時に、自分自身のことも助けている感じがします。LSPを始めた動機、「立派な人になりたい」ということにもつながるのですが、少しでも誰かの役に立てたと思えることが、私の自己肯定感につながり精神的にもすごく助かっている部分があるなと感じます。 
 

 


――どのような時に役に立てていると感じますか? 
やりがいともつながってくるのですが、成績が上がったことを教えてくれたり、自分とのセッションの時間を楽しみにしてくれていると言ってもらえたりすると、やっていてよかったと思うと同時に自分でも誰かの役に立てていることを実感できます。 
 

誰かの役に立てる人になりたい 

――ハルナさんはどんなLSになっていきたいですか? 
勉強を上手く教えられることも大事だと思うのですが、それに加えて一週間の中で一回くらい息抜きできる相手みたいに思ってもらえるような、情緒的なサポートもできる存在になれたらいいなと思います。親とも友達とも先生とも違う、肩肘張らずに自分の思っていることを気軽に言えるような存在になりたいです。 
 


――ハルナさんの将来の夢ややってみたいことはありますか? 
まだ職業は決めていないのですが、LSPをやっていて人に笑顔になってもらえたり人の役に立てるとやっぱり嬉しいということがわかったので、誰かの役に立てることが実感できる仕事ができたらいいなと思います。LSPの活動をしていなかったら誰かの役に立ちたいと思うこともなかっただろうし、新しい塾のバイトも始めていなかっただろうと思うので、LSPでやっている活動がすでに自分の生活に良い影響を与えてくれていると思います。 
 

制限される事があっても全部がだめになるわけではない 

――あしながの後輩にどのようなことを伝えていきたいですか? 
自分と同じ境遇の子たちには、制限されてしまう部分はあるにしても、だからといって全部がだめになってしまうわけではないということを伝えたいです。私自身が中学・高校の時に、お父さんがいないからみんなと違って私大なんて行けないのだと若干やけになっていた時期がありました。自分なんかが頑張ったところで行ける大学は限られていると思うととてもやる気をなくしてしまっていました。でも結果として行きたい大学を諦めてしまったとしても、今の大学で本当に楽しく勉強できているのでコツコツ真面目に頑張っていたら良いこともあると思いました。 
 
 
――LSPに興味のある人にメッセージをお願いします。 
最初は教育系の経験などが無いと不安なこともあると思います。私も不安に思いながら始めたのですが、大変な部分以上にやりがいがありました。LRの笑顔や頑張っている姿を見ることができるのは本当にやりがいの大きい活動ですし広がって欲しいと思います。なので、もし興味があって迷っていたら一度やってみて欲しいです! 
 

編集後記 

学生時代に選択肢が制限されていた経験から、LRに寄り添って将来諦めなければいけないことを減らしたいという思いを持って参加しているハルナさん。LSPがLRだけでなくハルナさん自身の自信ややりがいの発見につながっている話を聞いて、LSPを通して相互にいい影響を与えあっていることを実感しました。                

 

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