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大学進学を叶えたのは、「海外留学」だった!あしなが高校奨学生OBが日本人初のアルボカリ国際大学生に

2024年10月、あしなが高校奨学生OBの勇河さん(19歳・北海道出身)は、マレーシアにあるアルボカリ国際大学(Albukhary International University: AIU)に進学した初めての日本人となりました。本会では2023年度から、国内遺児支援活動の一環として、高校奨学生を対象としたアルボカリ国際大学受験サポート体制を導入し、勇河さんはその第一号でもあります。勇河さんの受験をサポートした本会職員が、ご本人とお母さんにお話を聞きました。

■本記事は、機関紙『NEWあしながファミリー』189号1面を加筆修正したものです。
※AIUについて詳しくは本記事下部をご覧ください。

チャンスを見つけた「高校奨学生のつどい」

高校3年生だった勇河さんには、大学進学を前に、心配していることがありました。

シングルマザーとして2人の子どもたちを支える母は、障がいがあり身体も弱く、収入が不安定で、あしなが高校奨学金を利用し、勇河さんと16歳の妹を高校進学させるだけで精一杯でした。

勇河さんが大学に進学するとなると、大学給付型奨学金があっても、家計の教育費負担は増えます。自分の進学にお金がかかることで、妹の進路選択の幅を狭めてしまわないだろうか、と思い悩んでいたのです。


その夏、地元北海道で行われた「高校奨学生のつどい」に参加した勇河さんは、マレーシアにある非営利大学「アルボカリ国際大学」のことを知りました。学費のみならず、寮費も無償、さらには奨学金も給付される大学があると知り、強く興味を惹かれました。独学で英検2級を取得したこともあり、留学に興味はあったものの、まさか自分に出来ることだとは思っていなかった勇河さん。しかし、非英語圏出身者対象の1年間の英語コースがあり、英語に自信がなくてもチャレンジできることを知って、心が動きました。


つどいから帰宅し、迷いながら母に相談すると、母は「チャンスをつかむしかない!」と強く背中を押してくれました。その言葉を受け、勇河さんは応募を決意しました。

粘り強さで合格勝ちとる

それからというもの、勇河さんは、英語のエッセイ執筆や面接の練習に励みました。

日ごろから自分の想いを言葉にすることが得意ではない勇河さんにとって、エッセイを書くことも、面接で自分の想いを話すことも、非常に難しい挑戦でした。何度も推敲を重ね、本会職員と面接練習を繰り返す中で、徐々に自信を深めていきました。


面接当日は、入念な準備の成果を発揮し、貧困や紛争、差別などの社会問題に触れ、「アルボカリ国際大学でソーシャルビジネスと経営を学んで社会を良くしたい」と熱意をもって語ることができました。
(※面接は通訳の同席が可能だったため、本会の職員が通訳に入りました)


英文エッセイでは、「自分の生涯を通じて、人々を助け、笑顔を届けられるような人になりたいです。貴学のムハマド・ユヌス教授は、利益のためではなく、困っている人々のためにビジネスを活用する方法を示していますが、私もこの大学でビジネスと社会科学を学び、彼のような道を歩んでいきたいと思っています」と、実直に想いを書き連ねました。

勇河さんの努力が実りました。2024年3月、晴れて合格を勝ち取り、アルボカリ国際大学で初の日本人留学生となりました。合格発表を受けて、「国籍の異なるルームメイトと暮らし、新しい言語、文化、そして宗教に触れるのがとても楽しみです」と、とても喜んでいました。また、結果を聞いた勇河さんの母は、「勇河は昔から生真面目で、人の気持ちを考えすぎるし、人付き合いがそこまで得意じゃなかったんです。でも、一度やりだすと途中で投げ出さない粘り強さがあるから」と、息子の健闘を称えていました。


新しい世界へ一歩踏み出すワクワク感が表情にもあふれる

後輩遺児に伝えたい「チャンスを待たず、自ら行動を」

あしながさんのご支援により高校進学が叶い、そのおかげで、大学進学の機会も手にすることができた」という感謝の気持ちから、勇河さんは、「何らかの形で恩返し・恩送りをしたい」と考えていました。

高校卒業後、9月のマレーシア渡航までには約半年の時間があります。そこで勇河さんは、4月の街頭募金(あしなが学生募金)と、8月の北海道のつどい(高校奨学生のつどい)に参加しました。


中学生の頃から、友だち以外の他者との付き合い方に悩んでいました。自信がなく緊張しがちで、うまくコミュニケーションをとれないことが苦痛だったのです。

しかし、今夏の「高校奨学生のつどい」に学生スタッフとして参加し、大きく意識が変わりました。あしなが大学奨学生の仲間たちと出会い、人の多様性に気づき、大いに刺激を受けたのです。みんなと協力して「つどい」開催準備を進めていくなかで、コミュニケーションへの苦手意識が薄れ、徐々に仲間意識が芽生えてきました。つどいのプログラム「大学生ブース」では、高校生たちに向けて、「チャンスを待つな。良い機会に巡りあうために行動しよう」と自信をもってメッセージを送ることもできました。

つどいでは、多くの参加者の前で話すことにも挑戦できた

新たなフィールドで、世界を広げていく

つどいで目覚しい成長を遂げた勇河さんは、2024年9月24日、マレーシアに渡航し、語学研修プログラムで英語の勉強を始めています。入学から約1か月、新しい生活が始まった今の心境を聞きました。

「ここはまるで別世界のようです。日本語はほとんど誰にも通じず、みな、価値観も生きてきた世界も全く違う。数人の友達ができ、彼らと接する中で、すでに僕の世界は大きく広がりました。これから英語を全力で勉強して、たくさんの人と、もっと深い意思疎通ができるように頑張ります!」


大学でできた友人たちと

 

人とのかかわり方に悩んでいた頃が嘘のように、すでに新しい友を得て、笑顔を見せてくれた勇河さん。あしなが奨学生として、たくさんの仲間に出会い、力をもらった彼は、これからもますます成長していくに違いありません。新たな旅路を応援しています。


(インタビュー:チエン・イー・クェック)


◇◇◇

アルボカリ国際大学について

Albukhary International University(AIU)は、Albukhary財団が、経済的な理由で大学進学が厳しい世界中の学生を対象に設立した全寮制の非営利大学です。全在学生に大学から奨学金が給付され、学費や寮費を支払う必要がありません。

在学生は世界の58か国から集まっており、多国籍かつ多文化な環境です。そのため、講義も含めて、学生生活における共通言語は英語となっています。非英語圏出身者が、入学時点で授業の受講にじゅうぶんな英語力を保持していない場合には、レベルに合わせた1年間の語学研修プログラムが提供されます。語学研修終了後は、英国式の3年間の大学教育を受けて卒業します。また、特にソーシャル・ビジネスの分野での実践的な学習機会が多いことが特徴です。

2023年4月に、アルボカリグループ特別上級顧問の平尾浩平氏が「恵まれない環境にある日本人学生にもアルボカリ国際大学で進学のチャンスを」と、本会に紹介してくださいました。

※あしなが大学奨学金の対象は国内大学のみとなっており、勇河さんはあしなが大学奨学生ではありません。
※アルボカリ国際大学について詳しくは機関紙『NEWあしながファミリー』187号8面をご覧ください。

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