遺児家庭の9割、物価上昇も収入低迷 ―緊急保護者アンケートの結果を発表
あしなが育英会は、2024年7⽉18⽇〜31⽇にかけて、全奨学⽣の保護者5179⼈を対象に緊急アンケートを実施しました。アンケートの目的は、物価上昇の影響と賃上げの状況を明らかにすることで、9⽉19⽇に厚⽣労働省で会⾒を開き、結果を発表しました。
回答者は3107⼈で、回答率は60.0%でした。社会的に賃上げが進むなかで、ただでさえ経済的に厳しい遺児や保護者に障がいがある家庭において、保護者の85.5%の収⼊が上がっていないことなどが明らかになりました。
遺児家庭を含む経済的に困窮している世帯は、最も物価上昇の影響を受けているにもかかわらず、そのほとんどは収⼊が上がっていません。
正規雇用に就いている保護者はわずか20.9%しかおらず、61.5%が世帯収入210万円以下で生活しています。
⾃由記述には、「3⾷⾷べることができない」、「猛暑のなか冷房を使えない」といった声も多く⾒られ、生命が危険にさらされるほどの深刻な困窮に直⾯していることがうかがわれます。
アンケートで明らかになった遺児家庭の窮状
86%は、昨年同時期と比較して収入が上がっていない
昨年同時期と⽐較した収⼊の増減について尋ねたところ、28.2%が「減った」、57.3%が「変わらない」と回答しています。「増えた」と回答した人は、わずか14.5%に留まりました。
また、回答者の属性を就労中の保護者に絞っても、「減った」が23.9%、「変わらない」が58.1%、「増えた」が18.0%と、大きく変わらない結果でした。
⽣きるために必死に働いている保護者も、病気や障がいなどにより働きたくても働けないでいる保護者も、物価上昇が続く中で、非常に苦しい⽣活を強いられています。
94%は、収入が物価上昇分をカバーできない
収⼊と物価のバランスについて聞いたところ、以下のような回答結果となりました。
- 収入は減少し、物価上昇分をカバーできない:26.0%
- 収入は横ばいで物価上昇分をカバーできない:53.5%
- 収入は増えたが物価上昇分をカバーできるほどではない:14.1%
- 収入が増えたので物価上昇分をカバーできている:2.6%
- わからない:3.9%
物価上昇をカバーできるだけの収入増があったのはわずか2.6%のみで、94.2%は物価上昇分をカバーできていません。
52.8%が一番に食費を、13.9%が光熱水費を一番に削っている
「昨年以上に物価⾼や光熱費値上がりの影響を受けていると感じますか?」という問いには、83.8%が「とても感じる」、15.9%が「感じる」と回答しました。「全く感じない」と回答したのは、わずか0.4%でした。
「とても感じる」「感じる」と回答した99.6%の保護者に、物価⾼を受けて何を⼀番節約してるか尋ねたところ、最も多かったのが「⾷費」で52.8%、次いで「被服・美容代」が16.0%、「光熱⽔費」が13.9%でした。
⾃由記述欄には、4⼈に1⼈が健康状態について記載
生命にかかわるレベルの困窮も
自由記述の分析をしたところ、42.6%(1324人)が保護者自身や子の健康状態に関する記述をしていました。
食費の切り詰め(一日一食・二食しか食べない、品数や量を減らす、肉・魚・野菜を買えないなど)が病気や体調不良につながっているケース(18人、0.6%)や、冷房の不使用(冷房代の節約、壊れたエアコンを買い替えられないなど)が熱中症など体調不良を引き起こすケース(14人、0.5%)、経済苦から通院費を工面できないケース(39人、1.3%)などがあり、物価は上がっているのに収入は増えていないという状況が、健康被害に繋がっているといえます。
中には、がんを患っているのに治療費を工面できず、ステージⅣ(最も進行した状態)になってしまった保護者や、ドクターストップがかかっているのに生活のために働らかざるを得ない保護者など、生命に関わる極めて危険な状況にある回答者もいました。
自由記述(一部抜粋・原文ママ)
親(私)自身の健康状態が良くなく、就労するも短時間でも厳しく、ドクターストップがかかっている状態です。それでも障害年金だけでは生活が成り立たず、子どもたちの悲しい顔、辛い思いは見るに耐えず、身体にムチを打って働いてはいます。それでも生活が困窮するばかりで、物価高、光熱費上昇の問題も出てきて、その日暮らしの日々が続いています。自分の身体もいつまで耐えられるか分からない状況で不安や辛い毎日です。子どもたちにとっても、あしながさんからの奨学金が唯一の希望となっております。(40代母親・群馬)
息子と私の2人暮らしです。周りに頼れる人もいません。食料品や光熱費、ガソリン代など、生きているだけで必ずかかってしまう費用の値上がりにより、年金だけでの生活では赤字になってしまい、奨学金や、助成費などにより何とか支えられていただいてる事を大変ありがたく思います。しかし、生活に余裕が全くないので、子どもの学費の貯金等が全くできず、躁鬱病を抱えながらも、少し調子が良くなったら、無理して働いて、また鬱病が悪化して…の繰り返しでとても困っています。私はもういいのですが、子どもの将来を潰してしまうので…。(40代母親・鳥取)
病気で足が元々悪かったのですが悪化し歩行困難になり再就職ができなくなりました。そんな中で自分一人だけの生活保護費で息子と生活しています。寒さはどうにかなりますが昨今の真夏の気温に光熱費を節約は命に関わるためしないでいます。湯水のように使っているわけではありませんが。それでも光熱費の高騰は気絶しそうな金額になってきています。そのため食事の品数を1品にし量も減りましたしたかが牛乳も娯楽となり買えなくなりました。お米も買っていませんし食べていませんおかずのみです。去年から私自身の食事を減らしたところ貧血になり倒れてしまいました。ですが食費を削るしか他の削るところはもうありません。(40代母親・大阪)
お恥ずかしい話、毎月生活費が足りず、キャッシングして、年金月に返してを繰り返しています。職に就いても、6時間コンビニにワンオペで3人分の仕事をさせられ腰痛になり5月に辞めました。沢山面接しましたが受からず八月からやっと働くことになりました。物価高騰やキャッシング借金返済で毎月苦しい生活です。(40代母親・長崎)
物価高で食事の量を減らしてるため家族全員痩せてきてます。光熱費を抑えるためにエアコンを付けないようにしてて、先週私と次男が熱中症になり苦しい思いをしました。やはり生きて行くために必要なものを物価高の影響で減らしたり我慢してることで、生きて行けなくなってしまうことになってます。(50代母親・北海道)
障害があり、就労ができず年金をいただいて生活している身です。母子家庭でもあり、収入面はかなり辛いです。今までは何とかやってきましたが、物価高になりさらに苦しくなりました。就労されてる方は給料アップで全体で見るとプラスマイナスの方もおられるようですが、こちらは年金額が数百円上がるのみです。高くなったものは買えません。私は何年も1日1食です。子供は3食ですがそれでも栄養が足りてる食事ではなく、BMIは16です。(30代母親・熊本)
ここまで苦しいのは初めてです。私たち家族に明日はあるのか?明日生きていけるのか?今、この時間が不安しかありません。アパートの2階は夏は暑く、一台のエアコンだけを頼りにフル稼働しても、部屋の中は30℃を下回る事はありません。次の電気代も、恐らく払えない。シャワーは35℃設定にしています。食事の一日一食は今始まった事ではないので、耐えられます。下の子の学校の旅行積立金が就学援助制度で準要保護にも関わらず毎月払わなければならないのだが、払う事が出来ません。生きて行くのが辛すぎます。(50代母親・埼玉)
夫は難病で左麻痺、私は乳がんで初めはステージⅡでしたが、治療費が高く、生活を考えたら、治療を中断するしかなく、2年前、治療を断念。そのため再発転移してしまい、ステージⅣになり、治療を開始はしたものの、やはり治療費が高く、病院には分割払いしていて、1ヶ月に1回の治療を2ヶ月に1回に減らしています。自分1人で家にいる時は朝、昼を抜き、夜だけの1食の時もあります。光熱費が払えなく止まることも度々。(40代母親・三重)
増加する奨学金申請者
そんな中、あしなが⾼校奨学⾦の申請者は増加しています。2024年度の申請者数は、1988年の奨学金制度発⾜以来、最多の3487⼈にのぼりました。しかし申請者数に奨学資⾦が追いつかず、56%にあたる1949⼈を、断腸の思いで不採⽤とせざるを得ませんでした。不採⽤となった申請者の家庭も、物価上昇で深刻な⽣活状況にあると推察されます。
10⽉19⽇から全国130か所で⾏う秋の「あしなが学⽣募⾦」では、本アンケート調査で明らかになった遺児家庭の窮状を世間の皆様にお伝えしていくとともに、一人でも多くの子どもたちの進学実現を支えるための支援の必要性を訴えてまいります。
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定期継続のご寄付者を募集しています!
高校へ入学または高校在学中の遺児を対象とした「あしなが高校奨学金」への申請者数が2年連続で急増しており、申請者の半数以上に奨学金を届けられない状況に至りました。定期継続の「あしながさん」として、高校奨学生を継続的にご支援くださいませんか?
「国内遺児の奨学金」への定期継続のご支援をいただいている方には、奨学生の成長や変化を身近に感じていただけるよう、年に一度、奨学生から届いた直筆の近況報告ハガキをお届けしています。
※「年賀状」「残暑見舞い」「卒業礼状」のいずれかをお届けします。
※礼状種別や学生のタイプ(大学生、高校生など)はご指定いただけません。