初めての保護者交流会を開催「心開いて話ができた」
「学校のママ友とはできない話がたくさんあります。貧しいこともバレたくない。でも、本当はそういった“話せないこと”を一番話したかったし、聞いてほしかった。ここでは、何を言っても否定されないので、安心して胸の内を吐露できました」(東北圏の保護者)
「同じ境遇の方にお会いでき、お話も聞けて、私も肩の力を抜いて頑張ろうと思えました。普段は、ひとり親の方に出会うこともなく、一般家庭と同じようにしなければと思っていましたが、ひとり親では、時間も人手も足りていない現状を認識できたのでよかったです」(近畿圏の保護者)
2025年11月29日(土)と30日(日)の2日間、本会にとって初めての試みである「保護者交流会」を開催し、全国から、あしなが高校奨学生の保護者49人が「あしながレインボーハウス」(東京都日野市)に集まりました。
あしなが高校奨学生の保護者には、配偶者を亡くしたひとり親の方、ご自身に障がいがあるひとり親の方、配偶者に障がいがあり介護・介助をしている方、孫を育てている方などがいます。本会が実施した保護者状況調査によると、あしなが奨学生世帯は、父親と母親がそろって子どもを育てている一般世帯よりも経済的に困窮しており、心理的・物理的に孤立しがちであることがわかっています。そこで、似たような悩みを抱える保護者同士が交流し、普段は言葉にできない思いをわかちあってもらう目的で、保護者のための場を企画しました。
当日は、参加者が複数のグループに分かれ、お互いの体験、意見、考え、悩みなどを共有し合いました。また、同行した子どもたちは、あしなが育英会の職員やボランティアとともに別プログラムで過ごし、保護者が話し合いに集中できる環境を整えました。
全員が初対面同士ということもあり、最初は、緊張や戸惑いを感じていた参加者たちですが、アイスブレイクや意見交換をするうちに、笑顔と笑い声が広がっていきました。日ごろ言葉にできなかった思いを打ち明けるなかで、語る方も涙、聞く方も涙といった場面も、あちらこちらで見られました。互いに共感・共鳴しながら、今まで孤軍奮闘してきたことを自覚し、労わり合う保護者の姿に、職員一同、このような場が求められていたことを強く実感しました。
本記事では、交流会の様子や、保護者たちが誰にも言えず胸に抱えてきた悩みや不安の声、交流会を終えた参加者の感想などを紹介します。
涙を流しながら共有する思い|交流会第1部
1日目は、参加者49人が9つの班に分かれ、指定されたテーマについて意見交換を行いました。
午前中の第1部では、伴侶との死別の要因(病気、災害、自死など)や障がい家庭かどうかなどを考慮して班分けをし、次の2つのトークテーマを用意しました。
- 今の生活でつらいこと、苦しいことは何ですか?
- 子どもに助けてもらっていると感じていることは何ですか?
各班には、ファシリテーター兼記録係として、あしなが育英会の職員が1人ずつ同席し、サポートしました。
「日雇いだから、体調を壊して働けなくなったのがつらい」
「障がいが周りには分かりにくいと、理解されないのが苦しい」
「夫が死んだ季節になると、気持ちが落ちる。過ぎたことだと分かっているのに止められない」
大多数の保護者は、日常生活で、伴侶との死別、あるいは自らの障がいについて、友人や同僚と語る機会が「ほとんど無い」と話していました。似た境遇に身を置く者同士だからこそ、心を開いて思いを共有し、本音で語り合えることがあります。苦しい胸の内が率直な言葉で語られるたび、うなずき、共感する保護者たちの姿がありました。
2つ目のテーマでは、子どもがアルバイトをして家計の一部をまかなったり、親の介護や家事・弟妹の面倒を見たりするなど、家庭の支え手となってくれていることへの感謝があるという声が多く聞かれました。同時に、「子どもに我慢をさせている」、「子どもの時間を奪っている」という罪悪感もあり、多くの方が複雑な感情を抱いていることがわかりました。
また、相談や支援などのサービスにたどり着く難しさについても話題になり、「最初の一歩が重い」、「(サービスがあっても)たどり着くまでのプロセスが遠い」といった切実な声が上がりました。「死別して動揺している心理状態のとき、あるいは病気や障がいで体調や気分が優れないときに、状況や病状を説明したり、煩雑な手続きをしたりするのは本当に難しかった」、もしくは「難しくて今も出来ていない」というように、当事者ならではの実情も語られました。
物価高騰にあえぐ保護者の姿が明確に|交流会第2部
第2部では、居住地域別にグループを組み替えて、
- 生活必需品で困ったことや工夫したこと
- 子育ての苦労や困りごと
の2つをテーマに話し合いました。
「生活必需品」に関しては、避けられない支出である「食費」と「光熱費」が話題の中心となりました。中でも、多くの班で、「米」が物価高の象徴として上げられました。
物価高騰の中でやりくりに苦心する様子が語られると同時に、「ボランティアの代償として無料で提供されるサービスを利用している」、「社割があるアルバイトを選んでいる」など、工夫や乗り切るためのアイデアも共有されました。
「子育ての苦労」については、教育費の工面が一番の負担となっており、無償化や給付で授業料が軽減されても、進学前は「ノーマーク」だった教育関連の出費が、家計を揺らしている実態が浮き彫りになりました。
■保護者交流会での発言の一例
「制服やジャージだけで十数万円かかりました。それに、かばん、靴、教科書に定期券と、すごく出費が多かった」
「(子どもから)部活のジャージとか防寒具とかを一括で注文するから1万8千円、って言われて、『急にそんな!』ってなりました」
「部活の遠征費が2泊3日となるといくらかかるんだろう?と怖くなります。好きな部活をやっていいよ、って言った手前、子どもに行くなとも言えず」
「高校を卒業するころに、自動車学校の出費が30万円も来るんだって思ったら、それも怖い」
「高校生男子の成長は速いので、靴が3か月ごとに小さくなる」
「スポーツ特待生で高校に進学したので、2万円するサッカー用のスパイクが1ヶ月でボロボロになる。他の部員は毎月買い替えているけれど、うちは年に2~3回が精一杯」
仲間とつながり、サポートとつながる|2日目
2日目は、朝食をゆっくりとってもらったあと、第3部として再び地域別グループでの意見交換会を設けました。
その後、あしなが育英会の職員から、本会のさまざまな支援制度やプログラムについて詳しく紹介しました。
-
大学奨学生のための学生寮「あしなが心塾」
-
「奨学生のつどい」(サマーキャンプ)
-
小中学生遺児を対象とした「ラーニングサポートプログラム」
-
レインボーハウスでの心のケアプログラム
また、会場となった「あしながレインボーハウス」には学生寮「あしなが心塾」が併設されているため、希望者には、館内を見学してもらいました。
「あしなが心塾」を利用することで、地方の高校生であっても、経済的な負担少なく、東京近辺にある大学への進学をかなえることができると、保護者に知ってもらう機会になりました。
「100回のカウンセリングを受けるよりも、1回の交流会」|参加者の声
開会式では、多くの参加者に緊張した表情や雰囲気の固さが感じられましたが、お互いの気持ちを伝えあい聞きあった濃密な時間を経て、翌日の閉会式では、リラックスした雰囲気のなか笑い声やざわめきが広がっていました。
あしなが育英会の恒例行事「奨学生のつどい」では、学生たちが、「自分はひとりじゃない」、「仲間に出会えた」という喜びの声を聞かせてくれます。今回、「保護者交流会」に参加した保護者からも、同様の声が寄せられました。
「私は保護者の方々の話されている時の涙や表情が強く印象に残っています。本当に『必死に生きてきた』ことがひしひしと伝わり、自分の合わせ鏡のように感じて、深い共感がありました。多くの方々がおっしゃっていた『大変なことも多いけれど、子どもがいて良かった』という言葉が特に印象に残っています」(東北圏)
「困っているのは自分だけではないなと思ったことが多くありました。貧困だけではない、障害などの問題を抱えている方の多さに気づきました」(東海圏)
「昼食がおいしすぎて『大切にされている感』を感じました。他の奨学生家庭はどんなかんじだろうか?と思っていたので、(保護者)アンケートのデータを聞けて良かったし、生活面の『情報共有』を思う存分語り合えたのが良かったです」(九州圏)
「同じような境遇の方々と、封印してきた胸の内をきいてもらえて、自分の心の声をきくことができ、仲間ができたようでした」(中国圏)
あしなが育英会は今後も、奨学生保護者のための場づくりに取り組んでいきます。











