「父の日」は、お父さんを一番思い出す日〈遺児の作文紹介〉
今年の父の日は、6月21日。
一般的に「父の日」は、お父さんに日頃の感謝やねぎらいの気持ちを伝えたり、プレゼントを贈ったりする日として知られています。この時期は、学校や商業施設などでも父の日にちなんだ企画がおこなわれ、父の日を意識する機会が増えます。
一方で、親と死別した子どもたちにとって、「父の日」は、亡くなった父親を思い出す日でもあります。
本記事では、2018年に本会が発行した遺児の作文集『父の日にお父さんはいない~親を亡くした子どもの作文集~』から、父親への思いをつづった2編の作文をご紹介します。
「心の中で一緒に生きています」
私にとっての父の日は、特別な日です。なぜかというとそれは、一番お父さんを思い出すからです。
私は父の日に、母の日と同様に、父にプレゼントをします。中身は、ハンカチや手紙など。実際にはお父さんは使えませんが、私の中の父は使ってくれています。
私が小学一年生の時、お父さんは食道がんで亡くなりました。その時は、実感がわきませんでした。私は心でずっと父を探していました。私は小学1年生だったので、どこにいるんだろうと思いながら、過ごしていました。
ですが、年月が過ぎていく中で、だんだん実感もわいてきました。
それから私は、父の日、お父さんの誕生日にプレゼントをするようになりました。時には、手紙を何枚も書くこともありました。
実際には読んでもらえない手紙でも、私にとってはとても大切なものです。もしかしたら天国で読んでいるかもしれませんし、読んでなくても、私の中では読んでくれています。
お父さんにとって私はどんな存在なのか、と考えながら書いたその手紙。私は、お父さんに読んでほしいと、心を込めながら書きました。
「お父さん帰ってきて」と考える毎日。お父さんの死から、一日一日がとても大切だと考えるようになりました。
授業でお父さんの顔を書くことがありました。私は、迷うことなく、そのまま、私の中のお父さんを描きました。だって私の中では死んでいないから。
私は、「お父さんが死んでしまって、かわいそうだね」とよく言われることがあります。
でも、私は、「今、一生懸命頑張って立ち上がってきたのに、なんでそんなことをいうんだろう」といつも思います。そんな言葉を私は、あまり気にしません。私の中では、お父さんは死んでなんかいません。
私の中のお父さんはいつまでも生き続けます。実際にはもう会うことのできないお父さんでも、私の心の中で一緒に生きています。
(中学1年生・女子)
「いい娘になって報告したい」
私は小学3年生の時に、父親を亡くしました。私はまだ幼く、父の日を祝ったことがなかったと思います。それをとても後悔しています。
学校で父の日に、手紙を書こうという授業がありました。私は、何も考えずに、気持ちを込められない手紙を書いて、その場をやりすごしました。
でも、私のクラスには、私と同じく、父親を亡くした子がいました。その子は手紙を、泣きながら書いていました。「この子は、とても素直だな」と思いました。
私は父親のことを思い出すと、何も考えられなくなるので、手紙もいい加減に書いていました。その子を見て、私もちゃんと書こうと思い、ゆっくり父親のことを思い出しながら書きました。
父親に手紙を書いた時、亡くなっていることを忘れて、生きていることにして書きました。今度一緒にディズニーランドに行きたいとか、一緒にごはんを食べたいとか、いろいろ書きました。
最後の文に、「成長した自分と弟を見て欲しかった」と書きました。
父親が亡くなり5年経った今、少しは成長して母親を支えることができていると思います。
父親が生きていたら何をしたいとか、話を聞いてほしいとか、したいことはいっぱいあるけれど、私の思い出の中でも、現実でも死んでいて、取り戻すことができない人だから、前を向いて、父親に胸をはって、「あなたの娘は、とてもいい娘になりましたよ。」と言える娘になりたいです。
今、この一瞬を大切にして、昔のことを悲しむわけじゃなく、明日を楽しみになれるようになりたいです。
父親のことも、思い出すともう会えない人と思ってしまいますが、いつか私が死んだとき、父親に笑顔で会いたいです。
(中学2年生・女子)
◇
今回紹介した2編の作文は、父親を亡くした子どもたちが、父への思いや日々の経験を自身の言葉でつづったものです。
作文にも描かれているように、「父の日」や「母の日」、誕生日や家族の記念日などのタイミングで、子どもたちが、亡くなった親への思いを巡らせたり、喜びや悲しみ・怒りなどのさまざまな気持ちを抱いたりすることがあります。
このような、喪失にともなう思い・気持ちなどを「グリーフ」と呼びます。グリーフの形や表れ方は一人ひとり異なりますが、気兼ねなく言葉や行動に表したり、共有したりできる「安心・安全」な場所があることが、グリーフケアにとって、とても重要です。
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