ワンデイプログラムで、「ありのままで過ごせる時間」が生まれる理由
2つの台風が関東を通過した翌日。しとしとと雨が降りしきる日曜日のお昼ごろ「あしながレインボーハウス」には親子が続々と集まってきました。この日は、1か月ぶりのワンデイプログラム開催日です。
あしなが育英会は、親を亡くした子どもの心のケアの拠点として、全国4か所の「レインボーハウス」を運営しています。レインボーハウスが大切にしているのは、「子どもたちがありのままの自分でいられる、安心安全な場所であること」です。
この記事では、6月28日(日)に東京の「あしながレインボーハウス」で行われたワンデイプログラムを通して、「ありのまま過ごせる時間」がどのように作られているのかをご紹介します。

子どもたちの側にはいつもファシリテーターがいます
※「ファシリテーター」とは、あしなが育英会の「ファシリテーター養成講座」を修了した18歳以上のボランティアです。グリーフサポートプログラムで子どもや保護者に寄り添い、ともに過ごします。
子どもとファシリテーターが作る「一日」
受付で顔なじみの職員に迎えられた子どもと保護者は、まず食堂へ向かいます。この日のメニューはカレーライス。プログラム前のひとときを、親子でゆっくり過ごしていました。
昼食を終えると、子どもたちはソワソワし始めます。12時45分になると、ホールへ駆け出す子、2階の「アートの部屋」に向かう子、お気に入りのぬいぐるみを取りに行く子など、それぞれが思い思いの遊び場へ向かいました。
子どもたちの動きに合わせるように、ファシリテーターも自然と館内に散らばっていきます。
ホールを全力で走り回る女の子と、一緒になって走る人。
2階の廊下では、工作をする男の子の隣に腰を下ろし、一緒に手を動かす人。
ホールの一角にも、子どもたちと輪になってカードゲームを楽しむ人たちがいました。
プログラムの最初から最後まで、子どもたちのそばにはファシリテーターが寄り添います。
そして、子どもとファシリテーターのコミュニケーションが、その日の一日を作っていきます。

砂場で遊ぶ子どもたちとファシリテーター

「アートの部屋」でエコバッグに絵を描いている子
保護者のための「自分の時間」
その頃、保護者たちは、ホールの隣の部屋に集まっていました。ガラス越しに子どもたちの様子も見えます。
テーブルにはコーヒーやお菓子が用意され、床にはクッションが並べられています。この日は、青いアジサイも飾られ、部屋全体にやわらかな季節感が広がっていました。
それぞれ好きなところに落ち着くと、コーヒーを淹れたりお菓子をつまんだりしながら、顔見知りの職員やファシリテーター、ほかの参加者たちと自然に会話を始めます。ここからプログラム終了までの約3時間は子どもと離れて、保護者もまた、自分自身のための時間を過ごします。

初めて会う保護者同士でも、すぐにおしゃべりに花が咲きます

保護者の部屋にもファシリテーターがいます
同じプログラムが、毎回「違う一日」になる
ワンデイプログラムでは、毎月、季節にちなんだテーマが設けられます。
この日のテーマは「七夕」。ホールには大きな竹が飾られ、「おはなしの部屋」はブラックライトで光る星空の空間になっていました。

手作りのミニプラネタリウムは子どもたちに大好評でした
一方、一日の流れは毎回ほぼ同じです。「はじまりのわ」と「おわりのわ」の間に、「じゆうなじかん」や「おやつのじかん」、「おはなしのじかん」が組み込まれています。
それでも、同じ「一日」は二度とありません。
この日参加していたある保護者は、「うちの子は、『飽きることがない。絶対行きたい』と言うんですよ」と笑いながら話しました。それを聞いた別の保護者も「そうそう、うちもです」とうなずきます。
レインボーハウスでは、子どもたちは、その日の過ごし方を自分で決めます。職員もファシリテーターも、子どもたちに、「この方がいいよ」「こうしなさい」とは言いません。
誰と過ごすか。
何をするか。
何を作るか。
話すか、話さないか。
自由時間をどう使うか。
子どもたちは、自分自身の「今、どう過ごしたいか」という気持ちに従って、その日の時間を作っていきます。その結果、同じプログラムでも、毎回違う一日ができあがります。

プログラムの時間割

子どもとファシリテーターのかかわりが、その日を作ります
「ありのまま」を支える環境
ファシリテーターの存在は、子どもや保護者が安心して過ごすために欠かせません。しかし、それだけで「ありのままで過ごせる場」が生まれるわけではありません。
レインボーハウスには、その時間を支えるための環境が整えられています。
館内には、「火山の部屋」「遊びの部屋」「おしゃべりの部屋」「おもいの部屋」「アートの部屋」など、それぞれ役割を持った部屋が設けられています。天井の高い多目的ホールには、子どもたちが走り回ったり、小さなグループが思い思いに過ごしたりできる十分な広さがあります。
また、季節を感じられる演出も、子どもたちや保護者が心地よく過ごせる場づくりにつながっています。
そして、もう一つ大切なのが、レインボーハウスのルールです。「自分も大事、相手も大事」という考え方を軸に、大人も子どもも、共通のルールを守って過ごします。
思い切り体を動かす子もいれば、工作に夢中になる子もいる。友達と遊ぶ子もいれば、ファシリテーターと過ごす子もいる。ルールがあるからこそ、一人ひとりが「自由」でいられるようになっています。
ワンデイプログラムの運営担当者は、プログラムについて「私たちが用意するのは、あくまで枠組みや空間。どう過ごすかは、子どもとファシリテーター次第なんです」と言います。
ファシリテーターの子どもとのかかわり方、館内の空間設計、そしてルール。
それぞれが重なり合うことで、子どもたちが「ありのまま」で過ごせる時間が育まれています。
今の気持ちに従って「今日のワンデイ」を作っていきます

子どものためのルール
◇◇◇
ファシリテーターに支えられているプログラム
ファシリテーターには、さまざまな方がいます。会社員や経営者、仕事を引退した方や子育てを終えた主婦の方、精神心理士、学生寮「あしなが心塾」の大学奨学生やレインボーハウスのプログラム卒業生など、職業や年代も多様です。
子どもや保護者、職員を含めると、これほど幅広い属性の方が一堂に会し、かかわり合う場は世の中にそんなに多くないかもしれません。
子どもたちと保護者にとっては、最も身近な支援者でもあります。
参加した子どもの一日そのものが、ファシリテーターと過ごす時間で出来ているという点で、子どもたちにとってファシリテーターは、「ありのままで過ごせる時間をくれる、最も身近なあしながさん」かもしれません。
グリーフサポートプログラムへのボランティア参加をお考えの方、遺族支援にご関心がある方、セルフケアのために学んでみたい方などに向けて、「ファシリテーター養成講座」を各レインボーハウスで年2回ずつ実施しています。以下のリンクからファシリテーターのページをご覧ください。
レインボーハウスのプログラムに参加希望の遺児家庭の方へ
あしなが育英会では、次の4か所にあるレインボーハウスで、親を亡くした子どもたちの心のケア(グリーフサポート)活動を行っています。子どもたち一人ひとりのグリーフ(grief:喪失に伴う様々な反応)を支えるため、子どもたちの身体の安全はもちろん、心の安心を感じてもらう環境を大切にしています。
お話を聞いてみたい方やプログラムへのご参加を希望される方は、お気軽にお問い合わせください。
※レインボーハウスのプログラムには、保護者(または養育者)の方も一緒に参加していただけます。
- あしながレインボーハウス(東京都日野市)…全国に住む小学校4年生から中学3年生の子どもが対象。ワンデイプログラムと宿泊型プログラムがあります。
- 神戸レインボーハウス(兵庫県神戸市)…関西圏に住む未就学児から中学3年生の子どもが対象です。
- 仙台レインボーハウス(宮城県仙台市)…震災津波遺児と、東北圏に住む未就学児から高校3年生までの子どもが対象です。
- 石巻レインボーハウス(宮城県石巻市)…震災津波遺児が対象です。










