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腹をくくると人間強い

保護者インタビューまなざし#8

明石さやかさん (兵庫県 30代)

 

 今回は、大学奨学生の長男と、12歳の双子の男の子をもつお母さんに話を伺った。3人の子どもと、仕事と、介護と…夫を亡くして5年間、走り続けてきたさやかさんだが、そこには多くの人の支えがあったという。

優しくてイラチ(せっかち)、そして子煩悩だった夫

 夫とは大阪で出会った。さやかさんが高校、大学を通してアルバイトしていた店のお客さんで、大学生の時に結婚した。ひとまわり以上年上で、とても優しい人だった。

「私は沖縄の離島でのんびりと育ったので、夫がとてもせっかちに映りました。歩くの早いし、食べるの早いし、何でも『早う、早う』とせかされて、見ていると本当にせわしなくて(笑)でも、子煩悩でアクティブで、子どもと外に出るのが大好きでした」

 子どもたちとスノーボードやサーフィンを楽しみ、子どもたちが喜びそうなことは積極的にやってくれた。夜中に起きて、カブトムシを捕りに行ったり、セミが羽化するところ見に行ったり。飛行機や新幹線もよく見える場所を探し出しては、連れて行ってくれた。ロードバイクに子どもを乗せて走ってくれることもあった。

「自分はどちらかというとインドア派で、パンやお菓子を作ったり、カーテンを縫ったりしているのが好きな方。正反対なのです。今ごろになって、もっと一緒に色々やったら良かったなんて思ったりしますけれど」

 結婚して16年間、とても楽しく、充実した生活を送っていた。最愛の伴侶との別れは、突然やってきた。5年前の夏休みの午後、夫が脳出血で倒れて、帰らぬ人となった。体調が悪いと訴えてから、本当にわずかな時間の出来事だった。

「腹をくくりなさい」と伝えてくれた友人

 夫が他界したころ、幼稚園教諭をしていた。夫を亡くしてから職場に復帰すると、同僚たちが気を遣っているのを感じた。まだ、30代前半だったさやかさんに掛ける言葉が見つからず、困っているようだった。しかし、子どもたちはいつもの通りだった。

「子どもたちは『なんで休んどったの?』っていつもの調子で聞いてくれました。『大切な人がお空に行ったの。そのお見送りをしていたのよ』って伝えたら、『お空にいったってどういうこと?』とか、『ぼくもおじいさんをお見送りした』ってたくさん話しかけてくれて。子どもたちに元気をもらいました。『だから、大切な人は、今、大切にしとくのよ』って話したりしました」

 

 しかし、実際のところ、さやかさんは不安でいっぱいだった。子ども3人を抱えて「どうしよう」「どうやって生活しよう」「どうやって生きていこう」と思い巡らす日々。「どうしよう、どうしよう」と、泣きつくさやかさんに、年配の友人が言ってくれた。

「さやか、世の中って悩んでどうにかなることと、どうにもならないことがある。人生って腹をくくらなくちゃいけないことがある。今がその時よ。腹をくくりなさい」

 それは魔法の言葉だった。その言葉を聞いて、悲しんでいても何も解決しないと悟った。

「腹をくくると人間強いです。それから、もう、大丈夫になったんです。実際、そんなこと言っていられないくらい、毎日忙しかった。子どもはご飯をたくさん食べるし、死んだ人には申し訳ないけれど、泣いても戻ってこない。もう、全然、大丈夫という感じになりました」

 

 そして、思い出した夫の言葉もあった。

「夫は、よく私たちに『タラは無いねん!』と言っていました。あぁしてタラ、こうしてタラのタラは無いっていうことです。だから、彼が生きていたら…とか、もう一度会えたら…とか、そういうことも考えないようにしているんです。そういうこと考えても、喜ぶ人ではなかったから」

 生き抜くために身につけた楽観とでもいうのだろうか。あれこれ悩まず、期待もし過ぎず。自然体で仕事と子育てに向き合うと決めた。

明石さん家族写真

家族そろっての一枚

子どもたちに「大人になるって楽しい」と教えてあげたい

 2年前から両親の介護が始まり、幼稚園教諭を辞めた。しかし、将来は幼児教室をやりたいという夢を持っている。やはり、子どもと関わるのが好きだ。積み木を使って、英語や算数を教えたり、大人との良い関りをたくさん作ってあげたりしたい。

「女の子はストレートに『センセ、そんなに太っているのは、ガリガリくんとか、ジャガリコとか食べるからよ!』って、お母さんの口調を真似して言ってきます。邪心がなくていいなぁって思います。男の子は本当に優しいし。やっぱり子どもに関わった仕事がしたいです。幼児教育はすごく大事で、幼児期に大人と関わることも大事です。『大人になるって楽しいよ!』って子どもたちに教えてあげたいんです」

 

 自分の子どもたちも、家族や地域の大人に親切にしてもらって育った。最初の頃は妹が、転職してまで同居してくれた。ご近所の方が子守をしてくださったこともある。学校の先生もよくしてくれたし、勤め先の園長夫妻も、いろいろと配慮をしてくれた。子どもたちは地域に育ててもらったと感じている。

「最近、長男が夫にとても似てきたんですよ。母も東京から帰ってきた長男をみて、夫が生き返ったかと思った!って、ものすごくびっくりしていました(笑)」

 

 20歳になった長男は、東京のあしなが心塾に住みながら大学に通っている。同年代の友人と一緒に住める心塾が気に入っている。次男と三男も、そんな兄貴に憧れて、いずれは東京の大学へ行きたいと考えているようだ。

「寄付してくださるあしながさんには感謝が絶えません。どなたか存じ上げない方々が寄付してくださって、息子が学校へ行ったり、心塾で生活したりできています。本当に有難いです」

 子どもたちが独立するまで、親業は続くが、その後の人生もまだ長い。そして、楽しみでもある。

 

(インタビュー 田上菜奈)

 

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