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あしなが学生募金の魂の継承~新旧学生代表の遺児支援への想い

1970年に始まり、遺児11万人の進学を後押ししてきた「あしなが学生募金」。黄緑色ののぼり旗をなびかせて、揃いのタスキを着けた学生たちが大きな声で遺児支援を呼びかける、あしながを象徴する活動です。全国で行われるこの募金活動は、あしなが奨学金を受ける大学生たちを中心に組織される学生団体「あしなが学生募金事務局」によって開催されています。

2月1日、学生募金事務局の代表である事務局長が交代しました。前事務局長の寺本龍正さん(中京大学4年)からタスキを受け取ったのは谷口和花菜さん(大阪教育大学2年)。新旧事務局長の2人に、遺児支援運動への想いを聞きました。

 

 

 

谷口さん(左)と寺本さん(2023年1月13日、あしなが育英会本部で)

 

 

――まず、この1年間の活動を振り返ってみて、どうでしたか?

 

寺本 2022年度は、コロナ禍で中止していた街頭募金を「全国募金リレー」という形で復活させてきた1年間でした。ようやく声を上げられる。ようやく遺児の現状を社会に発信できる。ようやく遺児や保護者の声を代弁できる。やってやるぞ!と意気込み、全都道府県で募金活動をしてきました。全都道府県での開催というのは、私が事務局長として特にこだわりを持ってきたことです。苦しい生活を強いられている遺児家庭は日本中にいるので、すべての県で声を上げるということは、遺児家庭の存在を社会に認識してもらうために欠かせないことだと思い、1年間全国の仲間たちと頑張ってきました。

 

谷口 私は関西エリアのエリアマネージャーとして、滋賀や兵庫、大阪、奈良での募金に立ってきました。実際に街頭に立つなかで、この募金の復活を待ってくれていた人たちがいることを知りました。3年間も貯金箱にお金を貯めて持ってきてくれた方、「復活できてよかったね」と声をかけてくれた方。半世紀以上の歴史がある活動であるだけに、日本中にこの募金を応援してくださっている方がいるのだと気付きました。そして寺本さんの言う通り、奨学金を必要としている子どもたちは多くおり、この活動は絶対に止めちゃいけないものなんだと感じたところです。

 

寺本 正直全国の学生、特に募金を一度も経験したことがない後輩たちは、ちゃんと街頭で「呼びかけ」をできるのだろうかという不安もありました。あしなが学生募金では局員自身の呼びかけを大切にしているんです。みんなが同じ文を読むのではなく、自分自身の言葉で遺児家庭の窮状やなぜ支援が必要かを呼びかける。ひとりひとり異なるオリジナリティのある呼びかけが、長い歴史の中で街頭の人たちの心を動かしてきました。この呼びかけをできるかが不安だったのですが、いざ募金リレーが始まってみると、みんなすごく熱い想いで、遺児の現状や奨学金の必要性を訴えていたんです。先輩たちが築き上げてきたあしなが学生募金の魂は、きちんと継承されていました。

 

 

 

 

――学生募金の魂、ですか。

 

寺本 はい。私たちが大切にしているフィロソフィーに「恩送り」という考えがあります。50年以上の歴史のなかで遺児の先輩たちは、自分たちが受けた恩を、次の世代の遺児たちやまだ支援が行き届いていない遺児たちに送ろうと活動してきました。当初交通遺児だけが支援対象でしたが、この恩送りの広がりによって、災害遺児、病気遺児、自死遺児、アフリカの遺児と支援の輪はどんどんと大きなものになってきました。しかし、恩送りはあしなが学生募金を語る上で欠かすことの出来ない大事な精神ですが、この運動に関わってきたのは遺児だけではありません。自分は遺児ではないけど、遺児の助けになりたいと汗を流してきた先輩や仲間もたくさんいます。この運動に関わってきたすべての人たちの「困っている遺児のために」という想いを、あしなが学生募金の魂と呼びたいのです。

 

谷口 これから事務局長として学生募金を引っ張っていきますが、人手不足など運営面での課題はたくさんあると感じています。しかし今の「魂」の話を聞いて、少しその課題解決の道が開けたように思います。局員ひとりひとりが遺児の現状や生の声に触れ、遺児支援についての考えを深めていくこと。ひとりひとりが持つ「魂」を大きくしていくことこそが、運動を大きくしていく鍵なのではないかと思います。

 

寺本 自分の考えを理解してもらえて嬉しいです。これもまた、魂の継承ですね(笑)

 

 

 

 

――ところで谷口さんは、なぜ事務局長になろうと思ったのですか?
 

谷口 実は、ここにいる寺本さんから「やってみないか?」と声をかけてもらったんです。全く予想していなかったので驚きましたが、そこで自分が本当にしたいことは何なのかを思い出しました。私は困っている子どもたちを助けたいという理由で、この活動を始めました。私自身も遺児で、これまでたくさんの困難に直面してきました。しかし私は、本当に多くの人たちに助けてもらい、ここまで来ることができたんです。同じ様に困っている子どもたちがたくさんいる。そんな子どもたちのために、事務局長として活動の最前線に立ち、支援を訴えていきたいと思い、局長に名乗りをあげました。

 

寺本 これだけ熱い想いを持っている後輩です。私はこの春大学を卒業するので、あしながの活動も終わりですが、安心してあとを任せることができます。

 

谷口 寺本さんのような先輩たちがそうしてきたように、困っている遺児たちがたくさんいることと、その現状を変えていきたいというメッセージを発信し続けていきます。

 

 

 

 

 

――新事務局長として、新年度の活動について考えていることを教えてください。

 

谷口 「訴える」ということを大事にしていきたいです。去年は久しぶりの街頭募金だったので、初めて募金を経験する大学3年生以下のメンバーは、募金の運営方法を一から学ぶ必要がありました。かくいう私もまだ大学2年生なので、去年が初めての街頭募金でてんてこ舞いになっていました。もっと遺児の現状について学び、考え、伝えることが出来たらよかったなと思います。寺本さんはさっき「みんなが熱い想いのこもった呼びかけを出来ていた」とおっしゃっていましたが、私はもっといい呼びかけを、全国の局員たちができるようになれたらと思うんです。

 

寺本 確かに、運営方法の研修や実務的な準備に費やした時間はかなり多かったですね。

 

谷口 そうなんです。しかしこれから始まる新年度は違います。募金リレーを通してみんなが街頭募金を一度は経験しました。だからこれまで以上に、遺児の現状や遺児家庭を取り巻く社会課題について学んだり、遺児の生の声を聞きに行ったりすることができるはずなんです。ひとりひとりが遺児支援への想いを深め、意見を交わしあい、より説得力のある言葉で奨学金の必要性を訴えていけたらと考えています。

 

 

 

 

 

――最後にお一人ずつメッセージをお願いします。

 

寺本 大学4年間取り組んできたあしなが運動を通して、特に事務局長としてこの1年間全力を注いできた全国募金リレーを通して、数え切れないほど多くの人たちの優しさが、遺児の未来につながっているんだと感じました。私はこれで卒業しますが、これからも後輩たちが遺児たちのために声を上げ続けていきます。これからもその声に耳を傾け、1人でも多くの子どもたちが進学という選択をできるよう、優しさをお寄せください。これまでありがとうございました。

 

谷口 今この瞬間に支援を必要としている遺児、そしてこれから先に生まれる遺児たちのために、私たちはこれからも街頭に立ち続けます。そして事務局長として、先輩たちが繋いできたこの運動の歴史を、きちんと繋いでいきます。私たちの運動への応援をどうぞよろしくお願いします。

 

 

全国募金リレーのゴールセレモニー後に、握手を交わす2人(2022年12月17日、新宿で)

 

 


 

「困っている遺児のために」という想いが半世紀にわたって繋がり、今日まで続いてきたあしなが学生募金。今年はコロナ禍前と同じく4月と10月に全国で開催される予定です。ぜひとも街頭で、学生たちの想いに触れていただければと思います。

詳細な日程や実施場所は決まり次第、本ウェブサイトでお知らせします。

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