東日本大震災遺児作文集『お空から、ちゃんと見ててね。』出版のお知らせ
震災・津波遺児の「声」を伝えたい
2011年3月11日、東北地方を中心に未曾有の被害を引き起こした東日本大震災。
この震災によって親を亡くした子どもは、2083人にのぼります。
あしなが育英会は、突然の災害に家族をうばわれた子どもたちを支えるため、1人あたり約282万円の特別一時金を給付したほか、遺児のための心のケアの拠点「レインボーハウス」を仙台・石巻・陸前高田に建設し、彼らの心の傷に寄い続けてきました。
今年2月、私たちはこの10年間の活動のご報告と、支えてくださった方々への感謝を込めて、東日本大震災・津波遺児の作文集『お空から、ちゃんと見ててね。』を出版しました。
1章・2章には、震災からまもない時期にレインボーハウスの活動に参加した子どもたちの作文を収録しています。
「おかあさんがいたら、いろんなことができたね。ケーキをつくったりできたよね。ほいくえんからかえると、おかあさんがつくって食べさせてくれたね。
3月10日までは、いい日だったね。
3月11日のごご2時46分に、つなみがおしよせてきました。わたしと、おとうさんと、おじいちゃんと、おじいちゃんのおねえさんのさとみさんもだいじょうぶだったけど、おかあさんは、つなみにながされて、おとうさんのしごとばのまえで死んでいました。わたしは、そのことをわすれないようにしたいとおもいます」
家族との思い出、震災当日の恐怖や戸惑い、震災後の生活など、ひとりひとりの想いが、切実な言葉で綴られています。
3章には、現在18~24歳に成長した彼らへのインタビュー、4章には10年を振り返る手記を掲載しました。5章では「大切な人にあてたお手紙」の一部を紹介しています。
10年の「その先」の支援のために
10年という歳月が過ぎた今でも、遺児たちは現在進行形で喪失体験と向き合い続けています。
震災当時0歳だった子は、まだやっと10歳。これから「親がいないこと」をはっきりと自覚する年齢です。進学や就職のように周囲の環境が変わるタイミングで、震災にまつわる記憶を思い出す人も多くいます。
そんな中でも、彼らはそのときどきの自分の気持ちを見つめながら、前へ進もうとしています。
「震災は私から多くの宝物を奪っていきましたが、それと同時に、生きることの尊さと死との向き合い方を教えてくれました。苦しいことや悲しいことがあっても、震災を経験して身につけた強さを生かして、いつ自分の身に死が訪れても幸せだったと思えるこれからを歩んでいきます」
世間や社会が「10年」「節目」と区切りをつけたとしても、支えを必要としている子どもたちがいるかぎり、レインボーハウスは彼らの「心の拠り所」であり続けます。
また、これから起こりうる災害で誰かが大切な人をなくしたとき、この作文集に綴られた言葉が、その人の支えになればと願っています。
『お空から、ちゃんと見ててね。』
2021年2月19日出版
発行:朝日新聞出版
定価:1210円(税込み)
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