【あしなが奨学金の現状を解説】ABEMA Primeに本会職員が出演
インターネットテレビ局「ABEMA」で、4月3日に放送されたニュース番組「ABEMA Prime」に、本会の島田北斗職員がゲスト出演し、あしなが奨学金の現状を紹介しました。
島田職員は約30分間の生放送で、MCの柏木由紀さん(アイドル)、コメンテーターの河井ゆずるさん(お笑いコンビ アインシュタイン)、夏野剛さん(近畿大学 情報学研究所 所長)、 成田修造さん(起業家/投資家)、司会進行の平石直之さん(テレビ朝日アナウンサー)らと、あしなが育英会の活動や奨学金の採用状況などについてトークしました。
ABEMAではノーカット版が(放送後6日間無料配信)、ABEMA Primeの公式Youtubeでは番組途中までの映像がご覧いただけます。
なお放送の中では、時間の都合や、私(島田)の言葉足らずで十分に説明できなかった点がいくつかあります。本記事で詳しく解説させていただきます。
【文:島田北斗】
高校奨学金(予約)申請者、過去最多1800人
番組では、2024年度あしなが高校奨学金予約採用(2024年4月に高校に進学する中学3年生が対象)の申請数が過去最多の1800人にのぼったことと、申請者の急増に奨学資金が追いつかず、その半数以上を採用できなかったことが紹介されました。
高校奨学金の採用には、「予約採用」とすでに高校に在学している遺児を対象とした「在学採用」の2種類があります。予約採用の申請数は2022年度1215人、23年度1328人、そして24年度は1800人と増え続けています。1800人は過去最多(これまでの最多は2008年の1515人)で、申請者の急増に奨学資金が追いつかず、54.7%にあたる985人を採用することが出来ませんでした。
「在学採用」への申請も、2022年度719人、23年度1301人と大幅に増えており、24年4月から募集開始した24年度の在学採用にも多くの申請があることが予測されます。
高校奨学金申請者の増加傾向の背景には、コロナ禍や物価高により遺児家庭の困窮が進んだことと、2023年度から高校奨学金を「一部給付(卒業後に交付額の一部を返還)」から「全額給付」に変更したことが考えられます。放送の中では、後者の制度変更について、トークが繰り広げられました。
番組で私(島田)も述べていますが、これまでの「一部給付」では、卒業後の返還に不安を感じて申請を諦めるケースが多くみられました。本会はそんな遺児たちに、学びを諦めることがないよう安心して奨学金を利用してもらうために、制度を変更しました。
「すべての遺児が平等に教育の機会を持てる社会」を目指す本会にとって必要な制度変更であり、事実としてこれまで以上に経済的に厳しい遺児家庭からの申請が増えました。この制度変更によって、希望を持つことができた遺児たちがいたと確信しています。
一方で、本会の想定を大きく上回る申請があり、採用することができなかった遺児たちが多くいることも事実であり、痛恨の極みです。
1人でも多くの遺児に奨学金を届けられるよう、4月に全国各地で実施する「あしなが学生募金」をはじめとする様々な機会を通して、これまで以上に広く支援を呼びかけていきます。
今年の春の街頭募金は4月20日(土)、21日(日)、27日(土)、28日(日)に全国各地で開催。詳細は学生募金ウェブサイトへ
本会の収支について
番組の中では、本会の2022年度の収支の一部が、フリップで紹介されました。このフリップでは寄付金が61億1600万円、奨学給付金が26億2100万円と記されていました。この部分だけみると、ご寄付の大半が遺児支援に使われていないように思われる方もいるかもしれませんが、そのようなことはありません。
26億2100万円(正確には26億2143万5000円)というのは「奨学給付金」の額であり、これとは別に35億9313万5000円を「奨学貸与金」として支出しています。あわせると、2022年度は62億1457万円を奨学金として交付しております(2022年度は、奨学金支出が寄付金を上回っていますが、本会は寄付以外にも卒業生からの貸与奨学金の返還収入があります)。
また、本会は奨学金以外にも、心のケアや学習支援、学生寮の運営、アフリカ遺児教育支援など様々な事業をおこなっており、遺児たちの成長を後押ししています。あしながさんから頂いた温かいご寄付は、適正に活用させていただいていることを、お約束します。
なお、本会は財務諸表や活動報告書、あずさ監査法人による監査報告書を、毎年ウェブサイトの年次報告書ページで公開しています。また日々の活動についてもウェブサイトのニュースページ「あしながメディア」や、年6回発行している機関紙「Newあしながファミリー」などを通して発信しています。
今後も支援者の皆様に安心いただけるよう、適切な情報発信に努めていきます。
遺児の進学について
番組の中では、卒業後に奨学金返済の負担が重くのしかかってしまう人々がいるという問題についても、議論がなされました。コメンテーターからは「ローン(奨学金)を借りるべきじゃない人が借りているのが問題」という発言もありました。
いわゆる「奨学金地獄」が社会問題になっていることは認識しており、心を痛めています。しかし本会は、「進学したい」と願う遺児たちには、奨学金支援をすべきであるという自信を持って活動しています。
番組でも触れましたが、私(島田)自身も、あしなが奨学金がなければ進学を諦めなければならなかったという遺児の1人です。また、これまで8年間本会職員として、現場で遺児学生・高校生たちと接してきた中で、奨学金に未来を開かれた子どもたちを多く見てきました。そして本会は1988年以来のべ5万8000人に奨学金を交付してきており、多くの卒業生たちが様々な業界で活躍しています。
もしあしなが奨学金がなかったら、自分を含むどれだけ多くの遺児の未来が閉ざされていたかと、考えただけで恐ろしくなります。
子どもの貧困は紛れもない社会問題であり、経済的な理由で子どもたちの未来が閉ざされることは絶対にあってはなりません。これからも本会は、あしなが奨学金が、遺児たちが未来を切り開く後押しになると信じ、活動を続けていきます。
なお本会の貸与奨学金は無利子であり、様々な事情で返還が難しい方には返還猶予の相談・申請を受け付けています。詳しくは奨学金の返還についてをご覧ください。
大学奨学生のつどいに参加した遺児学生たち(2023年9月・筆者撮影)
むすびに
以上、番組の中では伝えきれなかった現状を解説しました。
なお本記事は「ABEMA Prime」の放送内容や、出演者の発言を否定するものではありません。あくまでも、ゲスト出演した私(島田)が伝えきることができなかった現状をお伝えすることが、本記事の目的です。
今回「ABEMA Prime」に出演の機会をいただけたことで、本会の遺児支援活動について多くの方に知っていただけることができました。出演者やスタッフの皆様には心から感謝しています。この場を借りて、深く御礼申し上げます。
1人でも多くの遺児に奨学金を届けるためには、1人でも多くの方に現状を知っていただくことが必要です。遺児たちが経済的な理由で学びを諦めることがないよう、引き続き広報活動にも注力していきたいと思います。