1. HOME
  2. あしながメディア
  3. ネガティブなイメージは偏見だった!?LSPで気づいた新しい価値観【LSPインタビュー vol. 4】

ネガティブなイメージは偏見だった!?LSPで気づいた新しい価値観【LSPインタビュー vol. 4】

 

あしなが育英会は2020年10月より、小中学生対象の学習支援「ラーニングサポートプログラム(LSP)」という取り組みを行っています。LSPでは本会奨学生の大学生が中心となり、遺児家庭の小中学生にオンラインで学習指導を主とするサポートをしています。   
◇ラーニングサポートプログラム(LSP)の詳細はこちら
 

今回は2022年7月からLSとして活躍中の沼澤咲季さん(国際教養大学1年生)にインタビューを行いました。様々な経験を持つ沼澤さんが、どんな思いでLSPに参加し、何を感じているのか、何を学んだのかをお話を聞きました。 
 

※LS(ラーニングサポーター):LRの学習サポートをしているあしなが育英会奨学生を中心とした大学生   
※LR(ランナー):LSのサポートを受けている遺児家庭・障がい者家庭の小中学生

 

LS沼澤さん。お気に入りのキャンパスにて。

 

自分で何か行動を起こしたい。 

――沼澤さんについて自己紹介をお願いします。 

 

神奈川県出身の大学1年生です。中高時代は、地元の中高一貫校に通っていて、高校でダンス部に入っていました。その他にも、有志でフェアトレードを広めるための探究活動も行っていました。大学では、またダンス部に所属していて、昔通っていた英会話スクールの先生のアルバイトをしながら、LSPのラーニングサポーターも行っています。 
 

 

学祭のダンス部の舞台でマリオの衣装を着て踊る沼澤さん

 
――すごく活発に活動していますね。大学ではどんなことを学んでいるのですか? 

 

私の通っている国際教養大学は、入学してすぐにEAPという「英語の授業を受けるための英語の特訓期間」があり、それが終わったばかりで、9月から本格的に大学の授業を受けています。リベラルアーツ教育という、分野の垣根を超えて学ぶ大学のため、今はジェンダー学や環境学、数学など様々な分野を学んでいます。これから興味のある分野を見つけて、学びを深めていきたいと思っています。 
 

――様々な活動や勉強をしてきた沼澤さんが、LSPに興味を持ったきっかけは何ですか? 

 

私の通っていた学校で、小学6年生と保護者の1人が亡くなった殺傷事件がありました。市の行政機関などから、将来同様の事件が起きないようにするための取り組み等が行われず、事件前後で何も状況が変化しなかったことに違和感を感じました。

キリスト教の学校だったので、毎年ミサを行っていたのですが、事件から何年も経つと、その日に友達が遊んでいる姿をSNSに投稿していたりして、事件そのものが忘れられていくような気がしていました。何もなかったかのように忘れられていくことが、悲しくもあり、少し怖いとも感じていました。

 

なんとかしたいと思いつつも、実際には、自分自身も何も行動を起こせていませんでした。次第に、自分で何かやってみたいと思うようになり、友達に相談しました。友達から「『被害者支援』のボランティアをしてみたら?」と言われ調べていくうちに、被害者と遺児では少し違うのですが、LSPの遺児を支える仕組みに興味を持ち参加を決めました。 

 
――過去の悲しい事件で感じた違和感を突き詰めて自分で行動を起こした結果、LSPに興味を持ったのですね。 
 
 

LRの興味を引き出した「英語で話す時間」 

――ここからは普段のLSPセッションの様子について聞かせてください!毎週のLSPのセッションではどのようなことを行っていますか? 

最初の5分くらいは勉強に関係の無いことを話す時間を取ります。そこでコミュニケーションを取り、LRのその日の調子ややる気を汲み取って、その日に何をするかを相談して決めます。atama+を使いLRが1人で問題を解いているときは、ただ見守るだけではなく私も一緒に自分の勉強をしながらセッションを行っています。また、学校の宿題などで、わからない問題があれば事前に写真を送ってもらって、一緒に問題を解くときもあります。 
 
atama+: atama plus株式会社様が開発した、AIを用いた学習システムにより自分専用カリキュラムを作る事ができるオンライン教材。詳しくはこちら

 

 

沼澤さんがオンラインで学習支援をしている様子

 

 

――セッションの中で工夫していることはありますか? 

 

最近の取り組みなのですが、最後の10分くらいを使って英語で話す時間を作っています。まだ小学5年生なので”My name is~”などの簡単な文章ですが、毎週反復して英語に触れることで、慣れや自信を持ってもらえるように工夫しています。 

 

 
――とてもいい取り組みですね!英語を話す時間を導入してから、何か変化はありましたか? 

 

英語に関して自ら知ろうとしてくれるようになったのはとても大きいと思います。今までは、私が聞いたら答えてくれていたのですが、LRの方から、例えば、「りんごって英語でなんていうの?」と、自分で興味を持って聞いてくれるようになったことはとても嬉しいです。英語に慣れていくことで、中学生・高校生になったときに自信を持ってみんなをリードできるような生徒になってくれたらと思っています。 

 

また、英語だけでなく、何気ない会話でも、自分から興味を持って聞いてくれることが増えたと思います。例えば私が「今日は何していたの?」と聞くと、答えるだけで終わっていたのが、「沼澤さんは何をしていたのですか?」と聞き返してくれるようになったり、LRがジュラシックパークのTシャツを着ていたので、「ジュラシックパーク好きなの?」と聞くと、「沼澤さんはどんな映画が好きですか?」と聞いてくれたり。はい・いいえで終わらない会話ができるような関係になった気がします。 
 

 

――自ら興味を持って聞いてくれるのはとてもいい変化ですね!英会話スクールでも先生をしている沼澤さんですが、LSPならではの強みはどこにあると思いますか? 

 

LRのその日の気分によって科目を選ぶ事ができたり、LRの興味やレベルにあわせた教材を使えるところだと思います。特にまだ小学生だと、1週間前にこれをやろうと決めても、一週間後にやっぱり嫌だと思うことも多いと思います。なので、毎回セッションのはじめに「今日は何を勉強したいか」を聞くようにしています。本人の気持ちや楽しみを一番尊重し、寄り添うことができるところが、LSPのいいところだと思います。 
 
 

自分の持っていた偏見に気づく 

――7月からLSPに参加して、沼澤さん自身の中で変わったこと、新しく学んだことなどがあれば教えて下さい。 

 

ドラマや漫画の影響かも知れませんが、遺児家庭は1人の親が仕事と家事を両立しなければいけないので、両親のいる家庭に比べて必然的に収入が低くなり、子どもが習い事ややりたいことを我慢する必要があるというようなイメージを勝手に持っていました。でも、LSPを通して、LRと関わる中で、それが自分の持っていた偏見だということに気づきました。LRはセッション中に、今日学校であったことを楽しく話してくれたり、それこそ好きな映画の話をしてくれたりして、私の中の遺児家庭のイメージとは全然違う印象を感じました。 
 

――遺児や遺児家庭に対して、現在はどのような印象を感じていますか? 

 

ペア間の視点しか無いので、すべての家庭がそうだとは思いませんが、確かに遺児家庭は、両親がいる家庭に比べたらきっと大変なことも多いと思います。しかし、それ自体が必ず子どもの状態に直結するわけではなく、普通に学校へ行き、楽しい生活を送っていたり、すべての家庭が悲観的な状況であるわけではないということを学びました。 
 
私自身が殺傷事件の被害者支援から興味を持ったこともあり、遺児は両親がいる家庭に比べて制限があり、「支えてあげる必要がある」子どもたちという先入観がありました。知らずのうちに抱いてしまっていた自分の偏見に気づくことができたことは、私の中でとても大きい学びだと思っています。 
 

友達であり、頼れる人であり、尊敬できる人になるために  

オンラインでも楽しく英会話の練習ができているそう

 

 

――これからどんなLSになっていきたいですか? 

 

LRの子たちにとって、学校の先生より年齢が近いことで、友達感覚で頼りやすい部分もありつつ、尊敬できる部分もあるようなロールモデルになっていきたいです。 

 

小中学生の間って、学校と家族以外の大人と関わる機会ってあまりないと思います。それに自分の小学生のときを思い返すと、自分から先生に積極的に関われるタイプではなかったなと思いました。でも、私の通っていた英会話スクールの先生に対しては、年齢が近かったので、大学で何を学んでいるかなどを聞いていて、自分の芯があるのがとてもかっこいいと思っていました。

 

その先生のように、私も勉強を教えるだけでなく、何気なく大学についての話を聞けたり、かっこいいなと思ってもらえたり、LRが将来なにか選択するときに学校や家族以外に相談できる、 LRにとっての会話相手のような、身近な存在になりたいと思っています。 

 

 

――最後に、LSに興味のある人にメッセージをお願いします。 

 

アルバイトとかを除いて、大学生になると小中学生と関わる機会って結構少ないと思います。なので、LSPを通して小中学生と関わることで、私のように新しい価値観に出会うこともあると思います。それに、小中学生から頼ってもらえることは、純粋にとても嬉しい経験だと思います。週に1回1時間なら、負担にもならないので、迷っている方はぜひやってみてください! 
 

編集後記 

自分が知らず知らずのうちに抱いてしまっている偏見に気づくということは、とても難しいことだと思います。また、英語で話す時間を積極的に取り入れているということで、LRは冬に行われる外国人ファミリーとのホームステイイベントに参加を決意したそうです。これからLRの世界もどんどん広がっていくと思うととても楽しみです。 
 

寄付で遺児を
応援する

寄付する

Follow Us

あしなが育英会 公式SNS

Mail News

あしなが育英会 公式メールニュース

あしなが育英会の最新情報などをお届けします。

登録する

Contact

お問い合わせ

お問い合わせの前に、「よくあるご質問」をご覧ください。
掲載のないご質問は「お問い合わせ」よりご連絡ください。