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相棒はノートとペン。逆境を超えるアートの力(ムスタファさん・スーダン共和国出身)|アフリカ奨学生インタビュー

今年5月、東京で絵画の個展を開催したアフリカ遺児奨学生(100年構想生)がいます。スーダン共和国出身のムスタファさん(立命館アジア太平洋大学国際経営学部)です。2022年の9月に来日し、この秋、新3年生になりました。

ムスタファさんには子どもの頃から続けてきたライフワークがあります。それは、絵を描くこと。彼のこれまでのあゆみと、作品をご紹介します。

 

青いボールペン1本で描いた作品(題名なし)。細部まで観察して描き込むのがムスタファさんのスタイルです

 

貧しくてもノートとペンで絵を続けてきた

ムスタファさんが絵を描き始めたのは、小学生の頃でした。最初に描いたのは、好きなテレビアニメのキャラクターです。人から褒めてもらえるのが嬉しくて、常に自分の絵を持ち歩き、友人などに見せていましたが、自分に特別な才能があるとは思っていませんでした。

 

ムスタファさんは、小学校に上がる前に父親を亡くし、母親が複数の仕事をして家族を支えてくれました。子どもであっても、家計が厳しいことは承知していたので、画材を買って欲しい、絵を習いたいと、言い出すことはできませんでした。そこでムスタファさんは、簡単に手に入るノート、鉛筆、ペンだけで絵を描き続けました。友達が外で遊んでいる時間も作画に費やし、独学で、絵の技術を上達させていきました。

 

題名なし(2020年) この頃から本格的にアート作品を描き始めた

 

『A house in the bush』(2020年) 初めての風景画

 

高校卒業後、壁画や肖像画を描いてわずかな収入を得ていたムスタファさんですが、ある時、『あしながアフリカ遺児高等教育支援100年構想*』(以下、100年構想)の奨学金制度を知ります。「新しい世界、知らない世界に行きたい!」との想いから応募を決意。幸運にも採用され、日本の大学に進学することになりました。
*サブサハラ・アフリカ地域の遺児に世界の大学で学ぶ機会を提供し、アフリカの発展に貢献するリーダーを育成する事業です。詳しくはこちらをご覧ください。

初めての個展

来日後、母国とは全く異なる文化・風習の生活に苦労しながらも、学業の傍ら絵を描き続けてきたムスタファさん。技術はますます向上し、独自の作風も確立しつつあります。


今年5月、ムスタファさんの絵をみて衝撃を受けたあしなが育英会職員の提案により、東京都内にあるカフェで、個展を開催することになりました。

 

『Sight Symphony』(2023年) 3年間で表現力が大きく磨かれた

 

『Intersecting Lives』(2021年) 

 

「日本で初めての個展を開催できたとき、とても誇らしく、感謝の気持ちでいっぱいになりました。アーティストとして大きな一歩を踏み出したことに加え、新たな観客に自分のビジョンや表現力、創造力を見てもらうことができました。自分の作品に対する来場者の反応を見ているとき、心の内で謙虚さと緊張、そして興奮を同時に味わう感覚がありました。私の作品と見てくださるみなさんとの間に深いつながりを感じ、アーティストとしてさらに自分の可能性を広げていきたいというモチベーションを得ることができました。豊かな芸術文化をもつ日本という国での個展開催は、まさに夢がかなった瞬間でした」。

 

 

絵を描くムスタファさん

絵を描くムスタファさん。「夢中になると半日描き続けても疲れを感じない」と言います

紛争が続く母国スーダンへの想い

2023年4月、ムスタファさんの母国スーダンで武力衝突が勃発しました。生まれ故郷の首都ハルツームにおいても戦闘が断続的に発生し、家族や友人は、地方への避難を余儀なくされました。

現地にいる家族や友人と連絡を取り合う中で、ムスタファさんは、スーダンにおける地方の生活水準の低さを痛感します。首都とは違って電力や水道といったインフラ設備が整っておらず、飲み水を確保するために、場所によっては何キロも歩かなければなりません。医療設備も不十分で、安心して暮らせるとは言い難い状況です。

 

地方の困難な生活環境を知ったムスタファさんは、「スーダンの地方の人々の暮らしに貢献したい」という志を抱き、具体的な行動計画の作成に着手したところです。

読者に何か伝えたいことはありますか、と尋ねると、ムスタファさんは次のように語ってくれました。
「もしあしながさんの支援がなかったら、今の自分はありません。日本への留学が実現できていなければ、スーダンで紛争に巻き込まれ、勉強も絵も諦めていたかもしれません。多くの方に支えられているという感謝の気持ちを糧に、スーダンの地方発展を実現させるための勉強と、ライフワークである絵の制作を両立させて、貪欲に頑張りたいです」。普段は少しシャイなムスタファさんですが、その声には強い力が宿っていました。

 

『Hot Pair』(2024年) 最近は油絵にも取り組み始めました

 

ムスタファさんの作品にご関心がある方へ

「作品をより多くの人に見てもらうことが、さらなる創作意欲につながる」というムスタファさんとのコラボ企画やイベントなど、ご提案やご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、アフリカ事業部まで、ぜひご連絡ください。

 


お問い合わせフォーム

 

ムスタファさんのウェブサイトでは、その他の作品もご覧いただけます。

(外部リンクが開きます)

ムスタファさんは機関紙『Newあしながファミリー』188号でも紹介されています。



デジタル機関紙188号をPDFで見る

 

個性と才能にあふれる100年構想生たちの様々な挑戦と活躍のようすは、年2回発行の『アフリカ遺児支援レポート』でご覧いただけます。



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