ぼくは、お父さんがいないのはとても悲しいです|自死遺児の作文紹介【国際自死遺族の日】
今年の11月18日は、「国際自死遺族の日(※1)」だったことをご存知ですか?
あしなが育英会は2012年、自死遺児が勇気を振り絞って初めて自らの体験をつづった『自殺って言えなかった。』(自死遺児編集委員会・あしなが育英会編、サンマーク出版)を出版しました。それ以来、自殺対策基本法の制定活動(2006年成立・施行)や、レインボーハウスでの継続的なケアなど、自死遺児に関する先駆的な取り組みを続けています。
同書籍に収録された作文をご紹介します。ぜひお読みください。
お父さんへ
ぼくは今10さいです。お母さんは37さいです。姉ちゃんは12さいです。みんな元気です。ぼくはとくに元気です。リリーという犬が来たからみんなよけい元気です。でも、お父さんの代わりには、ぜんぜんなっていない。いたずらばかりしてぎゃくに困らせます。でも一つ代わりになっていることがあります。ぼくが一人でるすばんをしているときでも、リリーはいつもいてくれます。だれかがいると安心します。
今ぼくはサッカーをやっています。すごくサッカーが大好きです。お父さんは『笑点』の弟子になりたかったと聞きました。だからぼくはきっとおもしろい人だと思います。生きていたらいっしょにサッカーがしたかったです。あと、おもしろいことしてほしかったです。お父さんはきっと変な人だと思います。ぼくはお父さんみたいにでっかくなりたいです。でも、お父さんみたいに白くなりたくないです。
今ぼくはたくさんお友だちがいます。ぼくはお父さんのことあんまり好きじゃないけど、サッカー選手になってでっかいはかをたててあげるからね。なんであんまり好きじゃないのは、お父さんが死んだからです。生きていたら、お母さんから聞いたとおりの人ならぜったい大好きだったと思います。
一度でもお父さんに会いたかったです。お父さんの代わりにあしながの人たち、お母さん、お姉ちゃん、リリー、みんないるからだいじょうぶです。心配しないでね。でも、お父さんに会いたいです。ぼくは、お父さんがいないのはとても悲しいです。
シュウ(当時10歳・小学4年生) 1992年に父親が自死(父親は当時32歳)
※1 国際自死遺族の日
この記念日は、全米自殺予防財団の提唱ではじまりました。年に1度、自殺により家族や親しい人を失った人々が集まり、癒しと希望について語り合うことを目的に、世界中でイベントが行われます。1999年、米連邦議会は感謝祭の祝日(11月第4木曜日)の直前の土曜日を「自死遺族の日」として定め、その後、「国際自死遺族の日」となりました。
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あしなが育英会では、一人でも多くの方に、遺児や遺族の気持ちに触れ遺児支援への理解を深めるきっかけとしていただけるよう、遺族の手記をまとめた作文集を作成しました。ご希望の方に、以下の2種類を冊子代・送料含め、無料で進呈しています。
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あなたを支える場があります
大切な人との死別を経験すると、「グリーフ(愛惜・悲嘆)」と呼ばれる感情・反応が生じることがあります。
あしなが育英会の心のケア活動の拠点・レインボーハウスでは、子どもたちと保護者の方のグリーフに寄り添うため、安全・安心を感じてもらえる環境をつくり、定期的にさまざまなプログラムを行っています。
プログラムに参加してみたい方やレインボーハウスの活動についてお知りになりたい方は、以下のフォームよりお気軽にご連絡ください。
自死・自殺の報道や情報で不安になったときは
日本における自殺対策に取り組む、一般社団法人いのち支える自殺対策推進センター(JSCP)が、「こころのオンライン避難所」を用意しています。
ぜひ参考にしてください。
◇◇◇
書籍『自殺って言えなかった。』
2002年11月5日出版
発行:サンマ-ク出版
定価:1,430円(税込み)
お求めは全国の書店、またはインターネット書店へどうぞ
電子書籍の購入も可能です