1. HOME
  2. あしながメディア
  3. 笑顔は世界の共通語。カンボジアで見つけた私の目標

笑顔は世界の共通語。カンボジアで見つけた私の目標

カンボジア海外研修生 真弓さん(大学3年生)

あしなが奨学生の真弓さんは、経営学を学ぶ大学3年生です。2024年3月から約1年間、あしなが育英会の海外留学研修制度を利用して、高校の頃から憧れていた国、カンボジアで暮らしています。現地にある日系NPOでインターンとして活動する彼女は、小児がんの子どもたちや所属先の医師らとの出会いを通じて、自分が目指す未来像に続く、次のステップを見つけることができました。本記事では、真弓さんから届いた活動レポートをご紹介します。本記事では、真弓さんから届いた活動レポートをご紹介します。

夢がかなった!憧れのカンボジアでインターンシップ

最初は、高校3年生のときにカンボジアをテーマにした映画を見て、カンボジアに対する興味が芽生えました。大学2年生で初めて現地を訪れてから、ますますこの国に魅了され、半年に1回のペースで訪問するようになりました。実は今回が4回目の滞在になります。

あしなが育英会の職員や、過去に参加した先輩たちから話を聞いていて、私もいつか海外留学研修に参加してみたいなと思っていました。具体的に、どこの国に行きたいか決められないまま募集要項を開いたら、研修国の一つに大好きな「カンボジア」の文字を見つけたのです。「カンボジアに長期滞在できるチャンスだ!挑戦するしかない!!」 その一心で、海外留学研修に応募しました。

無事に研修生として採用され、2024年3月から1年間、研修先である「ジャパンハートこども医療センター」(※)で、インターンとして活動しています。活動先は、首都プノンペンから車で約1時間のカンダール州ウドンにあります。私には医療の専門知識は全くないのですが、主にSNSでの広報活動、そして、ジャパンハートが運営している奨学金事業の一部サポートと次年度の奨学生採用のサポートを担当しています。

研修が始まってから最初の1か月間は、インターンは私だけで、業務や生活に慣れるのに精一杯でした。そのため、スタッフや小児病棟の患者さんと深く関わる機会はほとんどありませんでした。その後、他のインターンが加わり、時間にも心にも余裕が出てきて、今は色々な方と関わらせていただいています。


私はカンボジアの言葉は話せないのですが、片言のクメール語(カンボジア語)と英語、日本語を織り交ぜてコミュニケーションを取っています。クメール語だけで話す方々とも、自然に意思疎通ができるようになりました。スーパーバイザーからは、「真弓は、片言でも臆することなくどんどんコミュニケーションを取っていて、誰よりも患者さんの日常の様子を知っているのがすごい!」とお褒めの言葉をいただきました。この体験から、どんな人とでも分け隔てなくコミュニケーションが取れるのは、私の特技なのかもしれない、と気づきました。

前述のとおり、私は今回の研修以前にも、個人でカンボジアを数回訪問していますが、その時も、カンボジアの人々の笑顔がすごく印象的だったことを覚えています。そして今、”笑顔は世界の共通語”だと、日々実感しています。

カンボジアの人々は、知らない私にも、温かい笑顔で挨拶してくれます。彼らの優しさに触れると、私も自然と笑顔になり、人々との心の距離が縮まりました。私自身が、誰とでも仲良くなれる性格だということもありますが、カンボジアの人々の親しみやすさのおかげで、とても心地よい関係を築くことができています。研修中も、彼らにとても支えられています。

 

同い年の看護師さんと一緒に(本人右)

小児がんの子どもたちのために

研修先の患者さんは、小児がんと闘っている子どもたちです。彼らと関わるうちに、「もっとこの子たちの笑顔が見たい」と思うようになりました。何をしたら喜んでもらえるか、インターン仲間と相談しながら考えています。

あるとき、他のインターンたちと話をしていると、足に腫瘍があって足の切断手術をした女の子が話題にあがりました。その子は、入院する前、親戚の化粧品屋さんで働いていて、メイクが好きなのだそうです。

彼女は入院当初、足の腫瘍が大きかったためにベッドの上から動くことができず、孤独な時間を過ごしていました。手術後、共同部屋へ移動してからは、小さな子たちの面倒を見たり、同年代の子と話したりなど、楽しそうな姿を度々見かけるようになりました。私が病室に会いに行ったときには、彼女はいつも笑顔で出迎え、慣れない日本語で「お元気ですか?」と話しかけ、ハグをしてくれます。

ある日、いつも明るい彼女の口から、「私には足もないし、やりたいことは何もできない」と悲観的な言葉が出てきました。そして、最後にぽつりと、「メイクを勉強したい。専門知識を身に付けたい」と言いました。そこで、インターン仲間たちみんなで相談し、「メイクイベントを絶対しよう」と決めました。

私たちが企画したイベントは、彼女が周りのみんなをメイクアップして、おしゃれした写真を残すというものです。いくつかメイク道具を準備して、SNSを模したフォトフレームも作りました。イベント当日には彼女自身もメイクをして、女の子にも男の子にもメイクを施してくれました。顔にキラキラのシールを貼って、患者さんのヘアアレンジをする、いつもより楽しそうな彼女を見ることができました。

イベントが終わった後も、他の患者さんの家族などにヘアアレンジをしている彼女の姿がありました。私にもしてくれました。がん闘病中の彼女自身は、化学療法の副作用で髪の毛がありません。彼女は、「自分には髪の毛がない!」と笑って話していましたが、メイクやヘアアレンジが好きな彼女にとって、とてもつらいことだと思います。彼女だけではなく、ここに入院している小児がんの子どもたちはみんな、様々なつらい局面に向き合っています。私は、「彼らを少しでも元気づけるために、何かできることはないだろうか?」と、毎日考えながら生活しています。

 

 

インターンのみんなで企画した「メイクイベント」。フレームも手作りした

ここに来たから気づけた、私の目指すべき道

最近は、大学卒業後について考えています。私はずっと、「起業」と「障がい者雇用」を組み合わせて働くことに興味をもってきました。

私の父は、障害者手帳を持っていて、安定した仕事があまりできませんでした。安定した収入を得られないことが影響していたのか、父は、いろいろなストレスを抱えるようになり、鬱のような症状もありました。最終的には、自らの命を絶つ選択をしました。

そのような環境で育ったこともあり、私は、障がいがあっても収入を得られることの大切さを身に染みて感じています。だからこそ、障がいを抱える人々に雇用を提供したい、障がいがある人でもストレスなく生活できるよう支援をしたい、生きる希望を与えられる存在になりたい、と考えるようになりました。

もう一つ、私の考え方に大きな影響を与えてくれた体験があります。子どものころ、よく遊んでいた近所の友人には障がいがありました。最近になって、その友人の保護者から「あの時、我が子の障がいの有無にかかわらず、分け隔てなく遊んでくれたことに救われた」と言われたのです。この言葉も、私の目指すべき道を導いてくれたように思います。

今、研修先の病院で関わっている患者さんたちの中には、病気を患った結果、障がいを抱えることになった人たちもいます。病気を患う前には出来ていたあらゆることが出来なくなり、葛藤している姿を見ることも多くあります。彼らとの関わりを通して、今まで以上に、「障がいの有無に関係なく仕事ができる、収入が得られる仕組みを作る」ことに取り組みたいと、強く思うようになりました。将来は起業することを目指していますが、大学卒業後はまず、障がいのある方とともに働く経験を積む、という具体的な目標を持つことができました。

 

研修先の病院で、一緒に働くカンボジア人の仲間たちと(本人左端)

次の目標を実現するために、成長し続けたい

幸いなことに、私はここで、多くの素敵な人たちと交流できました。日本を飛び出し、カンボジアに来たから出会えた人たちです。さらに、「目指したい大人」に出会うこともできました。その人は、誰とでも目線を合わせて話をし、平等を重んじ、仕事に対する情熱があり、仕事以外でも全てに全力を投じる、素敵な医師です。

私の海外留学研修は、残すところ2か月となりました。「帰国後には後輩たちにとって良いロールモデルにならなければ」というプレッシャーも少しありますが、むしろ、残された期間で、自分自身がどこまで成長できるのかを考えると、とても楽しみです。

この研修で見つけられた次の目標を実現するために、残りの期間も、積極的にたくさんの人たちとコミュニケーションを取り、新しい考えや視点を得ることを目指したいと思っています。

 

 

研修先の方たちと、屋台で朝ご飯を食べることも(本人は右から2番目)


※ジャパンハートこども医療センター

2008年からカンボジアで医療活動を展開している認定NPO法人「ジャパンハート」(2004年設立)が、活動拠点として2016年に建設した。2018年には小児がん治療等の設備が拡充された。

 

あしなが海外留学研修

あしなが育英会では、奨学生の国際性を養うため、大学・大学院、高等専門学校、専門学校に在籍中の本会奨学生を対象とした「海外留学研修」制度を設けています。アジア、アフリカの約10か国から希望に合う研修先を選択して応募でき、研修生に採用されると、1年間、海外で生活しながらボランティア活動やインターンシップなどに従事します。学生たちは、豊かな異文化体験を通じて、国際性、多様性、広い視野を養うことができます。2024年度は、16人の学生が、9か国10都市で学びを深めています。



海外留学研修についてはこちら

 

寄付で遺児を
応援する

寄付する

Follow Us

あしなが育英会 公式SNS

Mail News

あしなが育英会 公式メールニュース

あしなが育英会の最新情報などをお届けします。

登録する

Contact

お問い合わせ

お問い合わせの前に、「よくあるご質問」をご覧ください。
掲載のないご質問は「お問い合わせ」よりご連絡ください。