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お母さんに長生きを|玉井義臣より VOL. 3

コラム 2021.06.25

「はじまり」から50年を迎えるあしなが運動。

創設から今日まで走り続ける本会会長・玉井義臣の遺児支援にかける情熱や、社会と子どもたちへのメッセージは今も昔も変わりません。

 

この会長コラムのコーナーでは過去の機関紙で掲載された玉井会長のコラム(『れんたい』、『共生』)の中から一遍を選んでご紹介いたします。

 

先日、大学奨学生在学採用面接がありました。そこで分かったのは、今も昔も遺児家庭のひとり親は大変だということです。そこで今回は1974年7月に発行された、「お母さん」をテーマとしたコラムを掲載します。

お母さんに長生きを

第13号 1974年 7月

玉井義臣

 

 

 

こんにちは、玉井です。編集長です。お元気ですか。

僕はいま過労で倒れています。この原稿を書くのがとてもつらいです。病気かもしれません。

 

でも“運動”をやる以上、つらいとかシンドイとかいっておれない時があるのです。

交通遺児の運動をやり始めて、もう七年になります。

それ以来、毎年二回、肩がカンカンにこって、立っているのもつらいほどの疲れにおそわれます。

年に二回大きな運動をやるからです。

 

今年も育英会や励ます会の行事が年末まで目白押しに続いています。

僕だけでなく、ヤングの諸君も、休みは月一回、朝の九時から夜十時までの仕事に、皆グロッキーです。でもみんなやらねばならない仕事だから体をはってやっているのです。なにもこれはイキがって言っているのでもないし、弱音を吐いているのでもありません。ただ事実をいっているだけです。

 

 

一人三役も四役も

僕が今日書きたいのは君たちのお母さんのことです。

育英会の調査では君たちのお母さんのうち二人に1人は、「病気」か「病気がち」と答えておられます。君のお父さんは亡くなって何年ですか。その間のお母さんの苦労は僕がいわなくても君のほうがよく知っているでしょう。

働きに出て、君たちのためにおカネをもって帰ってくるお父さん役。朝晩疲れた体で台所をするお母さん本来の役。

「父親がいないために片身のせまい思いをしないように」などと心配される、あの日以来ふえた役柄。その他日々の生活を無事に送っていくためには、それはもう大変な、言うに言えない苦労を、お母さんはしておられるのです。一人二役も三役も。

 

何も心配がなくて外で働くのなら病気になるお母さんは少ないと思います。職場での気苦労、君たちへの心配、老後の不安などひとに話せない精神的苦痛が毎日すこしずつ積みかさなっていくほうが体にはよくないのです。床についてから君のことを考え、寝られない夜を過ごされるお母さんのことを、君は考えてみたことがありますか。

 

 

健康に留意する事

大学奨学生の面接試験で「尊敬する人は?」と聞くと「母」と答える人がかなりいます。「どうして」「いやッ、母の苦労をみていると、一生頭があがらないです」。親子の情愛がにじんでいます。なにも言葉にいいあらわさなくとも、お母さんがふりそそいでくれた愛情を、子どもはきっと感じています。でも大人の苦労が本当に理解できるようになるのは、やはり大きくなってからだと思います。

 

僕は君たちにお願いがあります。お母さんの健康は、そばにいる君たちがいつも気をつけてあげてください。それで苦労がなくなるというものでもないでしょうが、君のやさしさがお母さんを元気にさせることもあるのです。苦労が笑って話し合える時がくるまで、お母さんを長生きさせてあげてください。

 

僕は小さいときから病弱でしたから、病気の人の気持ちもわりによくわかるつもりですが、そんな僕でも倒れるところまでつっ走らざるをえなくってよく失敗します。お母さんもきっと休みたくても、君たちのためにむりをされているはずです。気をつけてあげてくださいね。ではお元気で、お母さんによろしく。

 

本会会長・玉井義臣は、

1964年、母親の交通事故死を機に交通評論家になり、交通事故に伴う諸問題の解決に尽力した後、1969年に設立した「交通遺児育英会」で専務理事に就任しました。

1993年に病気や災害、自死などで親を亡くした子どもたちや、障がいなどで親が十分に働けない家庭の子どもたちを支援する「あしなが育英会」を立ち上げ、98年から会長を務めています。

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