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ウガンダの少年野球は日本式。ABCから世界を目指す|ウガンダ人コーチ・エマさん

あしながウガンダの少年野球チーム、「Ashinaga Baseball Club(以下、ABC)」が目覚ましい活躍を見せています。


2024年9月に首都カンパラの少年野球リーグ(*1)で優勝し、12月には、第1回「ウガンダ甲子園(*2)」で初代優勝を飾りました。チームを率いたのは、高校生のとき日本人から野球を学び今日までABCで子どもたちに野球教育を続けてきたエマさんです。野球にかける想いを聞きました。

野球を通して、人として成長できた

私は2015年から、あしながウガンダの運転手として勤めるかたわら、ABCのコーチとして、毎日子どもたちに野球を教えています。私がABCに入った当時は、現在は日本で勤務しているあしなが育英会職員の阿部泰明さんがコーチでした。

実は、阿部さんとの出会いは、私が高校生のころまでさかのぼります。私は高校で野球を始め、JICAボランティアに指導してもらいました。その一人が阿部さんでした。 阿部さんたち日本人ボランティアは、野球の技術だけでなく、礼儀正しさ、人との関わり方、そして間違いを犯したときの謝り方まで、多くのことを教えてくれました。そのお陰で人として成長し、今の自分があると思っています。

ABCは、あしながウガンダに通っている子たちだけではなく、地域の子どもたちも受け入れています。彼らの家庭環境はさまざまであり、成長の仕方はそれぞれ異なります。しかし、野球が子どもたちの人生に、大きな影響を与えているというのは共通しています。

特に、ABCで野球を学ぶ中で、整理整頓、挨拶といった生活習慣が身に付くことは素晴らしいことだと思います。他の人との関わり方も変わっていきます。このような社会的な成長は、子どもたちがより良い人生を送るために役立つと信じています。

 

脱帽してグラウンドに一礼する姿は、日本の甲子園球児のよう

自分を信じ、夢に向かう背中を押す

「諦めずに努力して、勝利を手に入れる」という体験も、自信と成長につながっていると思います。その意味で、2024年の「カンパラ少年野球リーグ」での優勝は、大きな出来事でした。

決勝戦の対戦相手は、それまで3試合連続で負けていた強豪チーム。私は子どもたちに、「過去のミスは忘れて、この試合に勝つことに集中しなさい」と声をかけました。その結果、彼らは驚くような粘り強さを見せて、勝利をつかんだのです。周りも、彼ら自身も、その結果に驚いていました。とても感動的でした。

スポーツは教育の一環です。子どもたちには、ただ厳しくするのではなく、優しく接するように心がけています。そして、必要なときには、何が間違いだったか、どうしたら改善できるか、話し合って一緒に考えます。野球でも勉強でも、子どもたちが自分を信じ、夢に向かって努力できるように背中を押すのが、私たち「ASHINAGA(あしなが)」の役割だと思っているからです。子どもたちが選手として、またコミュニティの一員として成長する姿を見られるのは大きなやりがいです。

 

カンパラ少年野球リーグの優勝を子どもたちと一緒に喜ぶエマさん(後列左から2番目)

逆境を乗り越え、目指すはプロ野球選手

ABCには、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)主催の「U-12野球ワールドカップ2023予選大会」で、ウガンダ代表としてプレーした選手が6人います。私もこのとき、チームのヘッドコーチに抜擢されました。

2024年12月には、第1回「Uganda Koshien Baseball Championship (ウガンダ甲子園)」が開催され、ABCが初代優勝を飾りました。今やABCは、ウガンダを代表する少年野球チームとなりました。

 

今後さらにウガンダで野球が盛り上がり、ABCの子どもたちが一生懸命努力を続ければ、チームから、メジャーリーガーや、日本のプロ野球選手を輩出するのも夢ではありません。チャンスはあります。

しかし、ウガンダで野球をすることには、グラウンド数が少ない、国内で道具を揃えるのが難しい、など多くの課題を伴います。


ABCの子どもたちは、毎日の練習のために、1時間かけてグラウンドに通っています。さらに、チームが所有するグラブは31個ありますが、そのほとんどが、何年も使ってすり減ったり破れたりしてしまっています。グラブが足りないので、そのような状態のものでも使わざるを得ないのです。

それでも子どもたちは、「野球のスター選手になる」「メジャーリーグでプレーする」といった夢を抱いて、日々、野球に打ち込んでいます。「プロ野球選手になってお金を稼いだら、ウガンダの野球チームに道具を買ってあげたい」という子もいます。日本のみなさん、どうか応援していてください。

 

限られた道具をみんなで大切に使っている。数少ない綺麗な状態のグラブを見せてくれた

 

でこぼこで石だらけのグラウンドに、足元は裸足だが、真剣なまなざしで投球フォームを決める

ともにウガンダ少年野球を高みへ

エマさんの元指導者・阿部職員が、メッセージを寄せてくれました。

 

2009年に、あしながのウガンダ研修生(※)が立ち上げたABC。同じころ、私はJICAボランティアとして、ウガンダ国内で野球の普及活動や人材育成を行っていました。ABCにも道具の寄贈や巡回指導などで関わっていました。エマはその時の教え子で、まだ高校生でした。

ウガンダの子どもたちに野球を教えるために、ウガンダ人指導者の育成が重要だと感じていた私は、高校生ながらエマの人間性に魅力と資質を感じました。そこで、彼が高校を卒業した後、巡回指導に誘い、一緒に全国をまわりました。彼はその中でたくさんのことを学び、実践してくれたのだと思います。

今回の素晴らしい結果だけではなく、ABCの活動を通して、たくさんの子どもたちが「野球」に触れ、多くの学びと成長を得ていると知り、いち指導者として本当に心からうれしく思います。エマと全国をまわる中で語り合った様々なことが思い出され、胸が熱くなりました。

これからの益々の活躍を期待します。

 

※あしなが育英会では、本会の大学奨学生を対象とした海外留学研修を制度を設けています。ウガンダをはじめ、アフリカ、アジア、ヨーロッパなど、世界各国に研修生を派遣しています。

 

ABCで一緒に指導していたころのエマさん(後列左から2番目)と阿部職員(前列中央)

 

*1 カンパラ少年野球リーグ(Kampala Baseball League):現地NPO「Baseball at Heart」が主催する大会で昨年は6チームが参加。2試合ずつの総当たり戦を2ラウンドし、各チーム20試合ずつ戦いました。


*2 ウガンダ甲子園(Uganda Koshien Baseball Championship):ウガンダの少年野球は日本との関係が深く、長年、日本政府はJICA(独立行政法人国際協力機構)を通じて多くのボランティアや専門家を派遣してウガンダ野球の発展を支えてきました。20年の節目となった2024年に、JICAボランティア(JICA海外協力隊)の田中さん、あしなが育英会の海外研修でウガンダ留学中の大学奨学生・渡邊さん、ABCコーチのエマさんが発起人となり、ウガンダの少年野球のさらなる発展を目指して「ウガンダ甲子園」が始まりました。

ウガンダ甲子園ウェブサイト

JICAボランティアウェブサイト

 

◇◇◇

 

■本記事は、『アフリカ遺児支援レポート』2025年冬号(Vol. 8)に掲載された内容を一部加筆修正したものです。



アフリカ遺児支援レポート2025年冬号を見る

 

あしながウガンダでの活動やウガンダ留学中の大学奨学生の活躍などは、年2回発行の『アフリカ遺児支援レポート』でご報告しています。



アフリカ遺児支援レポートを見る

投稿者

沢田 十和子

2022年に入局し、アフリカ事業部のアドミニストレーター(管理・庶務業務)を担当。国際色豊かなアフリカ事業部の職員が、円滑に仕事ができるようにサポートしている。アフリカ人留学生の志や活躍などの情報発信も行っている。

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