ありのままの自分でいられる場所 ~ レインボーハウス・24年夏の活動報告~
あしなが育英会が全国5か所で運営する遺児の心のケアの施設「レインボーハウス」では、親との死別を経験した子どもと保護者のためのプログラムを、定期的に開催しています。
夏休みを迎えた7月、8月は、各地で、夏らしい遊びを楽しむ子どもたちの姿が見られました。各施設からプログラムの様子を一部ご紹介します。
あしながレインボーハウス|お泊りでたくさん遊ぼう!「全国小中学生遺児のつどい」
既に真夏日並みの暑さとなっていた7月13日から15日の3日間、「あしながレインボーハウス」(東京都日野市)で行われた「全国小中学生遺児のつどい」に、14名の子どもたちが集まりました。
つどい中、子どもたちは、「ファシリテーター」と呼ばれる大学生・社会人のボランティアスタッフと寝食を共にし、様々な活動を通して自分の気持ちに触れる時間を過ごします。 季節に合わせたプログラムとして、今回は夏らしく、かき氷や流しそうめんなどを楽しみました。
流しそうめんでは、定番のめんつゆと薬味だけでなく、ゴマだれ、コチュジャンなどの調味料も準備され、さまざまな組合せに挑戦している子どもたちもいました。
流れてくるそうめんを見事にキャッチ!
初日の夜のプログラムでは、「メモリーボックス」という、大切な人にまつわるものを入れる箱作りをしました。
「このマスキングテープはお父さんの好きな色だった」
「あまり顔を覚えていないけど、頑張って(亡くなった方に)似合う箱を作ってる!」
など、それぞれのペースで箱を飾り付けながら、そこに込めた想いを話してくれました。
翌日のプログラムでは、メモリーボックスに入れるメッセージカードを作成しました。箱作りを通して、亡くなった人についてゆっくり思い出したり、自分自身の気持ちと向き合ったりする機会を持ってもらうことができました。
手作りの箱を見ながら大切な人へのメッセージを考える
個性的なメモリーボックスが出来上がりました
2日目の夜には、つどい恒例の「キャンドルタイム」を行いました。目の前で揺れる炎を見つめ、みんなで同じ時間と空間を共有しながら、それぞれが自分の気持ちに触れるというプログラムです。
「レインボーハウスはありのままを受け入れてくれる代えがたい居場所になっています」と語ってくれたのは、今回が2回目の参加となった男の子です。仲間の言葉を聞きながら、これまでの歩みやつどいで過ごした2日間を振り返るなど、ゆっくりとした時間を全員で共有しました。
キャンドルの火に照らされながら、つどいを振り返る
最終日、「夜に笑いすぎて、喉がかれてしまった」と言いながら笑顔で日常へ戻っていく子どもたちを、職員とファシリテーター全員で見送り、今回のつどいを終了しました。
(報告者:あしながレインボーハウス 寺岡 将文)
東北レインボーハウス(仙台)|「開放日」で夏の縁日体験
仙台レインボーハウスでは、夏休み最初の週末となった7月21日(日)に、「開放日」を開催しました。
「開放日」とは、自由に遊んだり、読書したり、おしゃべりしたり、自分のペースで過ごし方を選べる、日帰りのプログラムです。子ども13名、保護者8名が参加し、6名のファシリテーターにサポートしていただきました。
おもちゃでいっぱいの「あそびの部屋」で、ファシリテーターと遊ぶ子どもたち
夏休みといえば、さまざまな行事やイベント、人が集まる機会があり、楽しいイメージがあります。一方で、遺児家庭の子どもたちや保護者からは、毎年、
「家族連れでお祭りや花火大会に来ている人を見るのが辛い」
「夏休みに何か思い出を作ってあげたいけど、(親)ひとりではしんどい」
「子どもとずっと2人きりで大変」
などの声が聞かれます。
そこで、職員たちは、「子どもたちと保護者に、レインボーハウスで夏の思い出をつくってもらおう!」と考え、この日のプログラムでは、いつもの食堂を縁日風に大変身させることにしました。
当日、食堂に登場したのは、駄菓子屋「にじいろ商店」です。駄菓子には10円から50円の値段が付けられており、ひとりあたり100円分まで買うことができるルールです。子どもたちは、保護者やファシリテーターに見守られながら、にじいろ商店専用「レインボーハウス通貨」の100円玉を握りしめて真剣におやつを選びました。
大賑わいのにじいろ商店ではあちこちから、「この駄菓子、初めて見た!」、「お母さんが小さい時も食べたよ」と、楽しそうなおしゃべりも聞こえてきました。みんな、特別なお買い物体験を堪能してくれたようです。
レインボーハウス硬貨100円を使ってお支払い
食堂に現れた「にじいろ商店」とミニゲームの屋台に子どもたちは大喜び
お買い物で盛り上がったあとは、ミニゲームコーナーがオープン!人形すくい、射的、型抜き、フォトブースなど、お祭りならではの遊びを用意しました。どのコーナーも子どもたちに大人気で、みんな本気でチャレンジしていました。
小さな子どもたちの真剣な姿に、周囲の大人たちも息を潜めるばかりの静けさで見守ります。成功すると湧き上がるような歓声と拍手が起こり、失敗したときは「惜しい!」、「頑張った!」といった励ましの声が響き渡りました。
みんながお互いを自然と尊重する空間が作りだされたひととき。「自分も大事、相手も大事」のルールを大切にしている、レインボーハウスならではの光景でした。
ボールすくいでは真剣な表情の子どもたち。緊張感が漂います
今回、はじめてレインボーハウスのプログラムに参加した小学生の男の子と未就学の女の子は「いろんなゲームができて楽しかったです。また来たいです」、「たのしかったです」と話してくれました。
新しく参加された方々にも今後また気軽に来ていただけるよう、レインボーハウスでは、ご利用家庭のみなさまとのつながりを大切にしています。
(報告者:仙台レインボーハウス 四海 結花)
神戸レインボーハウス|精霊馬とお盆を迎えよう!「ワンデイプログラム」
神戸レインボーハウスでは8月4日(日)「ワンデイプログラム」を開催しました。 子ども6名、保護者4名が参加し、9名のファシリテーターにサポートしていただきました。
いつもより少人数ながら、レインボーハウスの玄関に駆け寄ってくる子どもたちの姿やはじける笑顔から、みんながこの日をとても楽しみにしてくれていたことが伝わってきました。
また、参加者が少ないからこそ、ビンゴゲームやビー玉落とし、テーブルサッカー、ラジコンカーなど、さまざまな遊びをゆっくりと楽しむことができたようです。中学生は小さな部屋で、ファシリテーターと、学校のこと、趣味や家族の話などをして過ごしていました。
ひとしきり遊んだあとは、親との死別、家族や学校のこと、将来のことなど、さまざまな気持ちをシェアする「おはなしの時間」です。お盆を控えたこの日は、精霊馬(しょうりょううま)をモチーフにしたワークシートを使って気持ちを整理しました。
精霊馬とは、ご先祖様があの世とこの世を行き来するときに使う乗り物で、お盆の時期にキュウリを馬、ナスを牛に見立てて飾り付けたものです。亡くなった人が、来るときは少しでも早く来られるように馬を、帰りはのんびりお土産をたくさん持って帰れるよう牛を用意するのだそうです。
ワークでは、「お盆に帰ってきた家族に持たせたいおみやげはなんですか?」をテーマにワークシートをデコレーションしたり色を塗ったりしながら、気持ちを書き出したり、共有する時間を持ちました。
受付にも精霊馬を飾りました
みんなでビンゴゲーム!自分たちでルールを決めて楽しみました
真剣勝負!応援にも熱が入ります
今年の春頃からプログラムに参加している就学前の兄妹も、真剣な表情でワークシートに取り組んでくれました。ふたりは毎回お母さんと3人で来てくれて、いつもニコニコ楽しそうにおしゃべりしたり遊んだりしています。兄のまねっこをする妹、その妹を気にかけるお兄ちゃんという二人の様子はとても微笑ましく、見ている大人たちの心をほっこりさせてくれます。
そんな二人も作業時間には、お父さんの人柄や、好きだったこと、一緒に楽しみたかったこと、伝えたいことなどを一生懸命思い出しながら、言葉や絵、シールで表現していました。
きゅうりの精霊馬のそばに、お父さんの絵を描いています
こちらはデコレーションに夢中!お菓子やケーキのシールを貼りました
(報告者:神戸レインボーハウス 相澤 治)
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レインボーハウスのプログラムに関心のある方へ
あしなが育英会では、次の5か所にあるレインボーハウスで、親を亡くした子どもたちの心のケア(グリーフサポート)活動を行っています。子どもたち一人ひとりのグリーフ(grief:喪失に伴う様々な反応)を支えるため、子どもたちの身体の安全はもちろん、心の安心を感じてもらう環境を大切にしています。
お話を聞いてみたい方、プログラムのご参加を希望される方は、お気軽にお問い合わせください。
- あしながレインボーハウス(東京)…全国の遺児が対象
- 神戸レインボーハウス
- 仙台レインボーハウス(東北レインボーハウス)
- 石巻レインボーハウス(東北レインボーハウス)
- 陸前高田レインボーハウス(東北レインボーハウス)
レインボーハウスでのボランティアを希望される方へ
レインボーハウスでのプログラムには、ファシリテーターと呼ばれるボランティアの方が不可欠です。
一緒に遊んだり、おはなしをしたりしながら、子どもたちの気持ちに寄り添います。
2日間の「ファシリテーター養成講座」受講後に、実際のプログラムにご参加いただけます。